2002年システムアナリスト合格論文



『ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略の立案について』

H14−問1 ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略の立案について

 消費者のライフスタイルや価値観が多様化し、市場が急速に変化している。このようなビジネス環境の中で、経営判断や業務遂行の迅速化(以下、ビジネススピードの向上という)は、各企業にとって大きな経営課題の一つである。ビジネススピードの向上を目指し、IT 戦略を立案する企業は多い。例としては、次のようなものがある。
経営指標を随時、最新の状態で把握し、問題を素早く摘出することで、経営判断の迅速化を目指した ERP システムを構築する。供給者から消費者までを結ぶ、調達・製造・販売の一連の業務のつながりを円滑にし、迅速な商品提供を目指した SCM システムを構築する。顧客からのレスポンスやクレームなどについて関係部署が情報を共有し、迅速な顧客対応を目指した CRM システムを構築する。ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略の立案に当たって、システムアナリストは、その有効性を評価するために、ベストプラクティスを研究したり、IT の自社への適合性を検討したり、技術動向を判断したりすることが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが参画した、ビジネススピードの向上を目指す IT 戦略立案の背景となった企業のビジネス環境情報システムの置かれた状況の概要を、800字以内で述べよ。

設問イ  設問アで述べた状況の下で、ビジネススピードの向上を目指して立案した IT 戦略を述べよ。また、その中で、あなたが特に重要と考え工夫した点は何か、具体的に述べよ。

設問ウ  設問イで述べた IT 戦略について、あなたはどのように評価しているか、簡潔に述べよ。

−−−−−−−−−−−−−−− 論文要旨 −−−−−−−−−−−−−−−−−−

設問ア (企業のビジネス環境と情報システムの置かれた状況)
(1)経営課題
  ・航空機メーカM社における民需拡大に伴う、設計変更や補用品24時間対応の
   ビジネススピード向上と顧客満足向上

(2)既存システムの状況
  ・官需主体(長リードタイム、変動要因少、生産量少等)の生産システムを使用。
  ・MRP方式(固定リードタイム)手配による小日程計画上の問題
   →生産能力との整合性が取れていない。日々の細かい変動に追従できない。

設問イ (ビジネススピードの向上を目指してたIT 戦略と特に重要と考え工夫した点)
(1)IT戦略
  ・生産スケジューラ導入による小日程計画のシミュレーションと最適化
  ・Webによる進捗情報、補用品在庫情報等の社内外での共有

(2)工夫した点
  ・ビジョン(経営課題、IT戦略等)の共有
   経営課題やIT戦略を関係者に周知し、課題解決に向け確実に邁進するため
   システムにビジョンを込めた愛称をつけて広く周知させた。

  ・IT戦略を支える方法論の導入(ベストプラクティス)
   TOCによるボトルネック中心の有限能力スケジューリングを導入し、
   生産資源能力と作業負荷をバランスさせた全体最適と設計変更などに対応した
   迅速な再スケジューリングを可能とした。
   生産スケジューラは、TOCスケジューリングが可能なものを選定した。
   また、生産状況や在庫状況などをインターネット/イントラネットWebにより
   社内外での情報共有を可能とした。

  ・IT戦略を確実に実行するための仕掛け(業務への適合)
   生産プロセスへ小日程スケジューリング作業と進捗入力作業を組込み、これらを
   確実に実施しなければ、生産を実行することができないようにした。
   具体的には、前日の進捗を反映した毎日の作業予定表をスケジューラによって
   前日夜に計算し、その日の始めに作業者に指示するようにした。
   また、基幹業務システムと生産スケジューラの連携により工場全体のPDCA
   サイクルを確立した。

設問ウ (評価と今後の課題)
(1)評価
  ・システムの愛称がトップから末端まで周知されたため、経営課題とIT戦略を
   関係者が十分理解した上で、システムの実用展開・定着化を図ることができた。

  ・毎日の作業優先度明確化、変動に対する迅速な再スケジュールによる小日程計画
   の最適化、仕掛在庫削減等を実現できた。

  ・Webによる情報共有によるスピードアップと顧客への24時間情報提供による
   顧客満足度を向上させることができた。

(2)今後の課題
  ・大日程、中日程計画へのTOCスケジューリングの適用拡大