1995年プロジェクトマネージャ合格論文




     『進捗状況と問題の正確な把握について』

H7−問2 進捗状況と問題の正確な把握について

プロジェクトを計画どおりに進めるためには、プロジェクトマネージャはプロジェクトの進捗状況を正確に把握し、問題に応じて適切な対策をとる必要がある。一般的に進捗状況は定型化された進捗管理表などを用いて把握されるが、よりよく実態を把握するには、入手する情報やその収集方法を工夫することが重要である。特に設計フェーズにおいては、設計作業の対象が機能、構造、データ、性能、運用、移行など多様であり、また作業の中間段階での進捗度が定量的には表しにくい。そのため進捗状況を的確に把握するには様々な工夫が要求される。
更に、開発規模や期間、要員の構成やスキルの状況、採用した開発技法などのプロジェクトの特徴に応じて、進捗状況と問題を把握する方法を変えていくことも必要である。進捗遅れが発生しその対策を検討するに当たっては、問題を表面的にとらえるのではなく、問題の領域や影響度、更にはその本質的な原因を掘り下げて把握することが重要である。
あなたの経験に基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わったプロジェクトの概要と特徴を、進捗管理の視点から、800字以内で述べよ。

設問イ  設問アで述べたプロジェクトについて、設計フェーズにおける進捗状況及び問題を適切に把握するために、どのような方法を用いたか、特に工夫した点は何か、具体的に述べよ。また、これらの方法・工夫についてどう評価したか、簡潔に述べよ。

設問ウ  進捗管理をより適切に行うために、あなたが今後採り入れたい施策について進捗管理全般を対象に、簡潔に述べよ。

−−−−−−−−−−−−−−− 論文要旨 −−−−−−−−−−−−−−−−−−
設問ア (プロジェクトの概要と特徴)
 ・他社との共同開発プロジェクトに使用する設計システムの構築。
 ・構造化分析/設計手法を採用。
 ・共同開発プロジェクト開始までには絶対にシステムが必要。
 試験工程まで順調である作業進捗も、試験によって品質に問題が出れば、上流工程への手戻り
 が発生し最終的に遅れを生じる。これまでの経験から設計品質を原因とする手戻りが最も
 進捗管理へのインパクトが大きい。

設問イ (設計フェーズにおける進捗状況及び問題の把握)
(1)適用した方法
   通常は品質管理のツールとして利用されるレビューを進捗管理に適用した。
   設計工程での品質の優劣や後工程での手戻りが進捗に大きく影響する。
   これらを設計工程でのレビューで把握することは、リスク管理の面でも進捗管理への
   効果が大きい。

(2)工夫した点
   構造化分析/設計手法をベースに、2回に渡ってレビューを実施した。
   1回目は、基本構造がほぼ確定する進捗30%程度の時点。
   2回目は、設計作業がほぼ終了する進捗70%程度の時点。

   1回目の時点では、設計方針の大きな間違いがないかをチェックする。
   ここで、方向性に間違いがあれば、早めに軌道修正が可能。
   後になって設計方針や方向性に問題が発覚した場合、進捗の大幅な遅れは必至。
   2回目の時点では、ほぼ設計が終わっているので細部までチェックする。
   進捗が70%であれば、指摘事項に対処しても遅れを小さくできる。
   もし、100%設計作業完了時点でレビューする場合、指摘事項への対処の分だけ
   進捗は遅れることとなる。

   また、担当者は自分が100%完了と思えるまで「抱え込む」傾向にあるが、
   レビューでの指摘事項は必ずあるので、
   100%完了後にレビューを実施するのは潜在的に遅れていることになる。
   そこで、70%完成度の時点でレビューを行い、早めに進捗や品質等を確認し、
   遅れのリスクを顕在化させることが重要。

   レビュー完了報告書には、かならず品質に対する指摘事項毎に進捗・コストへの
   インパクト
を予測したリスク分析を添付し承認を受けることとした。
   これにより、重大な設計ミスや技術的問題により、進捗が遅れそうな場合は、問題解決の
   ための要員の手当てなど早めにリスク回避対策をとることができる。

設問ウ(評価と今後の課題)
(1)評価
   1回目のレビューにより重大な設計方針の有無を早期に確認したため、設計工程の
   後半以降、大きな手戻りが無く進捗に影響を与えることは無かった。
   また、2回目のレビューでは、いくつかの指摘事項が発見されたが、その対処は残り
   30%の作業中で吸収できたため、設計工程全体の遅れはなかった。
   後工程においても、設計レビューにより進捗管理に重大なインパクトを与える手戻り
   は発生しなかったため、最終的にスケジュールどおりにシステムを完成させる
   ことができた。

(2)今後の課題
   今回は性能的な問題は幸運にも発覚しなかったが、設計レビューの時点において
   性能的にもコスト・進捗への予測ができるような予測モデルを確立する必要がある。
   性能問題も統合試験工程などでのチューニングで回避できる場合は良いが、設計工程へ
   の手戻りが発生するような場合は進捗管理へのインパクトが大きい