『企業システム戦略』とは?
  The Enterprise Systems Strategy

『企業システム戦略』とは、企業システム(企業が事業活動を行う仕組み)を情報処理(読み・書き・そろばん)システムと捉え、ハードウェア(人/物/金etc)・ソフトウェア(風土文化/業務プロセス/規範etc)・ネットワーク(コミュニケーション/通信手段/チェーンetc)を最適化・高度化し、【情報の流れ】を整えることで、俊敏で無駄の無い・リーンで強靭な企業体質【組織の情報処理能力】を総合的に強化していく戦略です。

これは、経営戦略やビジネスアナリシスを【情報処理システム指向】で考えるものです。

The International Council on Systems Engineering (INCOSE)が昨年、2014年12月にリリースしたGuide to the Systems Engineering Body of Knowledge (SEBoK)v.1.3.1の中で「Enterprise Systems Engineering」に「The Enterprise as a System」として記述しているのと同様の概念です。

The Enterprise as a System
the enterprise needs to be looked at “as a system,” rather than as a collection of functions connected solely by information systems and shared facilities. What distinguishes the design of enterprise systems from product systems is the inclusion of people as a component of the system.

『深遠なる知識(Profound Knowledge)』(W.エドワーズ・デミング)
・システムの理解(Appreciation of a system)
 構成要素間の相互作用を理解し、どのようにシステムが安定するのか把握すること。この安定した状態がどんなものかによって、システムの出力が決定され、出力の品質を向上させる鍵はそこにある。
・ばらつきに関する知識(Knowledge of variation)
 測定可能なものには必ず標準的な分散と特殊原因による固有の問題があると理解すること。品質向上は、特殊原因を排除し、標準的な分散を制御することに他ならない。標準的な分散に対して変革しようとすれば、システムの性能は低下する。

 ちなみに、【物の流れ】は、単に情報が媒体に乗って流れているに過ぎませんので、これも【情報の流れ】として捉えることができます。商品は、物質そのものに価値があるのではなく、形状や機能、性能などの【情報】に付加価値があるのです。サービスは、行為そのもではなく、そのことで提供できる幸福感や安心感などの【情報】に付加価値があるのです。

■組織の情報処理能力(バランススコアカードの4つの視点による)

 ・財務の視点:経営活動から得られる情報と経営指標を結び付け、経営改善する能力

 ・顧客の視点:顧客情報と経営活動を結び付け、顧客満足や自社ブランドを向上する能力

 ・プロセスの視点:プロセス間の情報処理を改善し、経営活動のムダを省く能力

 ・学習と成長の視点:人材情報を経営活動に結び付け、組織学習と成長を促す能力

 ※能力5段階:1.個人プレー→2.個別プロセス→3.組織的プロセス→4.測定・制御→5.最適化

 『企業システム戦略』では、情報処理能力を【守破離】の3ステップを踏んで向上させ、
確実に収益につなげるようにします。


 1段階目  個人の経験や暗黙知に依存。

 2段階目  経験をマニュアル化する。

 3段階目  仕組みを標準化し組織全体で遵守する。

       ★基本を守る「守」

 4段階目  仕組みからデータ取得して制御・工夫する。

       ★基本を打破して工夫する「破」

 5段階目  仕組みを変革し、最適化を図る。

       ★基本を離れ新境地を確立「離」



■企業システムの構造
 ・ハードウェア:
  「人、物、金」人には、組織構造が含まれ、物には、ビル、工場、機械設備、伝票帳票類など
 ・ソフトウェア:
  ビジョン、戦略、企業文化、業務標準、マニュアルなど
  ビジョンや経営戦略、企業文化はオペレーティング・ソフトウェア(OS)
  各部門の業務標準やマニュアルなどがアプリケーション・ソフトウェア
 ・ネットワーク:
  FAXや電話、社内LAN、社内郵便など

この戦略では、企業のあらゆる活動を情報処理として捉えます。情報処理は、入力→処理→出力です。これは、昔から「読み、書き、そろばん」と言われるもので、難しいことはなにもありません。ITの専門的な知識などは、全く必要ありません。3つの簡単な記号とルールで表現します。

とにかく、あらゆる企業活動を、入力→処理→出力で細分化していくだけです。例えば、「人事管理」は、人体という媒体に保持されている、役割やスキルという情報を管理しているのだと考えます。「在庫管理」は、素材という媒体に保持されている品種や数量という情報を管理しているのだと考えます。そして、それぞれの処理に対して、5W2Hを明確化していきます。5W2Hとは言うまでも無く「Who、When、Where、 What、How、Why、How much」のことです。これを、具体的に細かくして行きます。Whoであれば、会社→事業部→部課係→個人まで。Whenであれば、年月日時分秒まで。Whereであれば、地域→国→郡→市町村→番地→地区→建物→区画→机など。そして、それぞれが、どれくらいの時間・コストが掛かっているかHow muchを調べていきます。



これは、「ピッキング・ミス」の改善例です。出荷指示書と現物を照合確認するポイントを前に移動するだけで情報伝達ロスを防止できますね。改善前では、設置段階でトラブルとなった場合、確認から再出荷指示し設置まで7日を要します。改善後では、出荷直後に照合するのに半日追加されますが、トラブルがあっても1日で済みます。ちなみに、照合は出荷作業者とは別の人が行うほうが正しいはずとの思い込みを抑止できます。



これは、「誤発注」の改善例です。カタログと注文書を照合確認するポイントを設置する前に入れるだけで情報伝達ロスを防止できますね。改善前では、設置段階でトラブルとなった場合、取り外してから再発注し設置まで7日を要します。改善後では、発注後に照合作業が半日追加されますが、トラブルがあっても半日で済みます。

ここでのポイントは、改善前の業務フローで例外ケースとフィードバックループを意識することです。通常、業務フローを書くときにうまくいくケースのみや流れが一方向で終わるように書いてしまうことがありますが、情報伝達ロスを改善するには、これでは不十分です。例外ケースとフィードバックループを意識することで、改善点「不良をつくるムダ」が見えてきます。

また、新しく業務フローを起こす場合でも、例外ケースとフィードバックループを意識することで、情報伝達ロスを防止する対策をあらかじめ講じることも可能となります。いずれの場合でも、もしもうまくいかなければどうなるかと例外ケースを想定し、万一、例外が発生した場合、どのようにフィードバックが発生するかを考えます。この2つを明確化することで情報伝達ロスを具体的に日数やコストに換算することができます。



次に、このHow muchを調べ、どこでの情報処理に時間・コストが掛かっているか、ムダがあるかを調べます。ムダとは、付加価値を生まない情報および情報処理のことで、以下のようなものがあります。そして、あらゆるムダの原因は、情報伝達ロスです。つまり、

     【 ムダ(贅肉) = インプット情報 − アウトプット情報 】

情報のムダには大きく以下のような7つのムダがあります。これは、TPS(トヨタ生産方式)で定義されている7つのムダを情報処理に当てはめたものです。

「つくり過ぎのムダ」・・・多すぎる情報は、ムダです。
「手待ちのムダ」・・・情報を待っている時間は、ムダです。
「運搬のムダ」・・・情報を運搬(伝達)することは、ムダです。
「加工のムダ」・・・付加価値を生まない情報の加工は、ムダです。
「在庫のムダ」・・・情報を貯めておくことは、ムダです。
「動作のムダ」・・・非効率的な情報処理は、ムダです。
「不良をつくるムダ」・・・不正確な情報は、次工程のムダを生みます。
「探すムダ」・・・情報を探すのは、ムダです。

 例えば、営業と製造の間で情報伝達ミス(不良な情報やタイミングのずれ)が発生することで、ムダな在庫が生まれます。あるいは、逆に欠品が発生し販売機会を失います。製造の中の工程間で情報伝達ミスが発生すれば、ムダな仕掛かり在庫が増えますし、生産計画と現場の間で情報伝達ミスが発生すれば、手待ちが生じます。かの有名な「かんばん」は、この情報伝達ミスを改善し仕掛かり在庫を減らすための高度な情報処理システムです。

 式で表せば

【余分な在庫数(+10個) = 生産数(100個) − 販売数(90個)】

【欠品数(−10個) = 生産数(90個) − 販売数(100個)】です。

 ここで、販売数(必要なもの、必要な時、必要な量)という情報がどれだけ正しく製造部門に伝わったかでムダの多少が決まってきますよね。予測も含めて、如何に販売数という情報をサプライチェーンに正しく伝達し共有するかを考えるのが、いわゆるサプライチェーンマネージメントです。このように書いてしまうと一見簡単に思えますが、実際にこれが難しいのはチェーンが長くなればなるほど、多くのノイズにさらされてしまい、正しく情報が伝達できなくなるからです。例えば、生産リードタイムや生産能力が安定しない、品質が安定せず不良品が発生する、機械が故障する、人が休む、需要変動、景気など様々なノイズ(リスク要因)が発生します。

 そのため、少し余分に作っておこうとか、早めに作っておこうとかいった意志が働きますので、これらもノイズになります。チェーンを情報が伝わる中で、このように各々が下駄を履かせることによって、最初は90個で十分であったはずの生産数という情報が最終的には120個になったりします。そうすると、余分な在庫が増加してしまうのです。そこで、かんばん方式では、この生産数の情報を「かんばん」によって、お客様である後工程から前工程に(必要なもの、必要な時、必要な量)伝え、前工程は「かんばん」に従って生産するようにして、情報のムダをなくす仕組みです。

このように、ムダを無くすには情報をどうやって流せばよいか、業務改善して新たな仕組みを考えます。例えば、ギルブレスの動作経済の法則や品質工学(ノイズ対策)、TOC(バッファ制御)などが参考になります。

 ギルブレスの動作経済の法則
 @基本動作の数を少なくする
 A同時並行で行う
 B距離を短くする
 C動作を楽にする

そして、新たな仕組みを試行し効果を検証します。この新たな仕組みを動かすハードウェア、ソフトウェア、ネットワークのことを『企業システム』と言います。特に重要なのは、ソフトウェアです。大義名分、行動規範や組織文化、ルールなどのソフトウェアがしっかりしていないと、どんな新たな仕組みも絵に描いた餅でしかありません。ITだけ先行導入して改革倒れになるパターンの多くは、このためです。

新たな仕組みが確立できたら、横展開し改善を加速するためにITを活用します。こうして、業務改善とIT活用を推進し、情報処理の無駄を無くしていくことで、俊敏で無駄の無い・リーンで強靭な企業体質を総合的に造り上げていくことができるのです。情報にムダが無い=リードタイム短縮、投資効率向上し(ムダな買い物や加工をしない)、その結果、利益率向上や競争力向上につながります。

例えば、「ピッキング・ミス」の改善では、「出荷指示書の品番をバーコード化し、同じ品番のバーコードを物にも添付しておき、出荷の際に両者のバーコードを読んで、コンピュータに照合させるなどは、良くある仕組みです。
また、「誤発注」の改善では、カタログの型番をバーコード化し、注文時にバーコードを読み取らせて、注文書に機械的に転写するなど良くある仕組みです。あるいは、カタログを電子化し、商談中にカタログを画面で触ったら、その場で注文データを生成してしまうとか。さらに、そのまま電子承認後にEDI(電子商取引)でメーカに発注をかけるなどです。

人間系の目視照合や転記より、スピードと精度が圧倒的に優位です。この場合、人間系によるコントロールでは、スピードと精度に限界があり、商機(売上)を逃しているとか、ロス(コスト)が減らないとか、それと、IT設備投資額を天秤にかけ、効果が投資を上回るならIT設備投資するのが良いでしょう。


■『企業システム戦略家』

『企業システム戦略』の策定・実行・評価のPDCAサイクルを実践する者で、情報処理技術者試験(<高度試験:レベル4>)のITストラジスト(旧、システムアナリスト)、プロジェクトマネージャ、システム監査技術者の3区分に合格し、当研究会により認定を受けた者。

・ITストラテジスト
 高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術を活用して改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。

・プロジェクトマネージャ
 高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの責任者として、プロジェクト計画を立案し、必要となる要員や資源を確保し、計画した予算、納期、品質の達成について責任をもってプロジェクトを管理・運営する者

・システム監査技術者
 高度IT人材として確立した専門分野をもち、被監査対象から独立した立場で、情報システムや組込みシステムに関するリスク及びコントロールを総合的に点検、評価し、監査結果をトップマネジメントなどに報告し、改善を勧告する者

 ★『企業システム戦略家』養成塾
 当研究会の趣旨として、『企業システム戦略』(情報収集〜IT戦略策定・実行・評価)までを実践できる【企業システム戦略家】を自社で育成するのが最も望ましいのです。なぜなら、自社の企業体質を変革するのは、自社を一番良く知っている人間が実践するのが、最も効果的で確実だからです。

 経営者自らが『企業システム戦略家』であれば申し分ありませんが、参謀として『企業システム戦略家』を育成できれば、あるいは、自らが『企業システム戦略家』となれば、他に代え難い永続的な会社の財産(人財)となります。『企業システム戦略家』の養成は、最も重要な人材戦略の一つです。最初は、当研究会の指導を受けるとしても、いずれは自立するほうが、絶対に得策です。これを、当研究会では「守・破・離」の成長モデルと呼んでいます。

 そこで、当研究会では、『企業システム戦略家』を養成するための通信教育などを行っています。ぜひ、経営者自ら、あるいは自社要員を、あるいは自分自身を『企業システム戦略家』にしましょう。そして、自分流の『企業システム戦略』を実践し、企業体質の変革を自力で推進していきましょう。『企業システム戦略家』養成塾に関して、詳しくはこちらをご覧下さい。