◆その要求仕様は常識?それとも非常識?

システム開発

◆常識と非常識の狭間
仕様書に書いていなくても、当然、機能として盛り込まれていなければならないと主張する根拠として、それが、常識的なものであるかどうかが争点となる場合もある。ところが、この常識というのが非常にあいまいであり、どこまでを常識というのかがはっきりしない。確かに業界標準となっている業務プロセス業務用語などは、その業界に精通しているものにとっては、常識である。

 業者は、はたして、どれくらい業界に精通しているであろうか。おそらく、それほど精通しているとは思えない。例え、精通していても業界の標準的な業務についての知識であって、あなたの会社の業務である可能性は低い。すなわち、私の常識は、あなたの非常識ということもあり、暗黙の了解が、麗しき誤解を生む元凶である。

 仕様書に書いてなくても、常識であると主張できるほど、業界標準に則った業務プロセスになっていると言えるかどうか、甚だ疑問である。自社内だけで通用する常識を振りかざして、「そんな機能は当然。盛り込んでいないのは欠陥だ」と声を張り上げるのは、かなり乱暴だと思う。ただし、業者との付き合いが長く、何度か自社のシステム構築を発注している場合には、自社内だけの常識であっても、ある程度は主張できるだろう。

 これまでのシステム構築の経験から明らかに常識と言える業務知識についても、仕様書に書いていなかったことを理由に、欠陥ではないと主張するような業者なら、今後も継続的にシステム構築を発注する意味はあまりない。それならば、最初から経験の無い業者に発注したほうが、甘えや馴れ合いが無くなり要件定義要求仕様をしっかりと固められる可能性もある。業者に「それは、知りませんでした。」と開き直られても諦めもつくというものだ。業者は、自社業界の専門家ではなく、コンピュータ業界の専門家であるということを前提に仕様書をまとめれば、暗黙の了解大前提の省略による誤解も少なくなる。

 一方で、コンピュータ業界の常識は、特に記述する必要は無い。例えば、システムが障害を起こした場合に、データベースなどを障害前に回復し、安全にシステムを再起動できるような機能を備えることは、仕様書に明記していないとしても、システム構築の専門家として常識的に盛り込んでいなければならない。このようなことまで、仕様書に明記していないことを理由に欠陥ではないと主張するような非常識な業者には、お引取り願ったほうが良い。おそらく、障害対策回復機能以外にも、仕様書に明記していないことを理由に手抜きをしている可能性が高い。  

■目次:システム開発する前に知っておくべきこと83項目

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