◆最小の投資で、最大の効果を生む、開発の優先順位付け
さて、ここでは最小の投資で、最大の効果を生むシステムを具体的な戦略・計画に落とし込むための優先順位付けについて、少し実務的な話をしよう。まず、最大の効果を得るためには、その効果を測定する。この効果は、前述したように「財務面での利益」だけでなく、それに関連つけられた「顧客、社内プロセス、学習と成長」の視点を加え多面的に評価しなければならない。次に、投資を測定する。投資は、後述するように、利用者にとって意味のあるシステム構成要素(画面・帳票・ファイル)を元に、ファンクションポイント法で算出する。
そして、最小の投資で、最大の効果を生む案件順に並べて、その上位から優先的に開発していく。最小の投資で、最大の効果というのは、いわゆるROI(投資利益率:利益÷投資×100%)として数値化する。最後に、シナリオの妥当性や実行推進力を加味して最終的な優先順位を決定する。これらは、定性的なものであるが、評価基準にしたがって採点し、それを合計して数値化する。いくら、ROIが最大になるような案件であっても、その効果獲得までのシナリオに妥当性が無かったり、実行推進力に不安があれば、計画どうりの成果を獲得することができない。いくら、最小の投資とはいえ、システムは使ってナンボ。使われなければ、投資自体が無駄になってしまう。以下に、これら評価項目の例を示す。
<評価項目と説明>
・シナリオ
「問題、原因、対策から効果、目的達成」にいたる計画の妥当性、議論の深さ、仮説立証性等を評価する。
a.経営貢献度
顧客満足、損益改善等の経営課題に対し有効か。
b.費用対効果
投資に対する、効果や成果は十分か。
c.適用範囲
システムを適用できる組織、機種は広範か。
d.首尾一貫性
目的達成までのシナリオは一貫し矛盾は無いか。
e.明確性
目的、効果、新旧業務の違い(できていること/やりたいこと)、
適用時期や範囲等は明確か。
f.現状認識度 既存のシステムや業務はもちろん、
現場の実態や客先の現状は十分把握しているか。
「なぜを5回繰り返し」て真因を探っているか。
g.実現性
システムの機能はもちろん、運用において、
人、業務、組織、社外まで考慮して検討しているか。
h.リスク評価
計画実行上のリスク分析・評価が十分か。
4大リスク:「要件、技術、人、組織文化」
i.代替案検討度
リスク等を考慮し、代替案を検討しているか。
システム化以外に改善案を検討評価しているか。
・推進力
計画を推進する、人や組織を動かすための仕組み(仕様作成、運用試験、実用化展開、利用促進を推進し、成果を獲得するための施策等)を評価する。
a.組織体制
仕様決定から利用促進までの組織体制は十分か
b.キーマン
現場のキーマンを十分参画させているか
c.職制の理解度
システムの目的や効果、担当者の作業負荷などについて、
職制は理解・認知しているか
d.組織文化
業務変革に対する抵抗、パソコン嫌い等はないか
e.実用化状況
改修対象システム又は他の既存システムは十分活用され、
所定の成果が出ているか
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