システム内部の変更を安全に行うには、ユーザから分からないように密かに行うべし！

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　●企業システム戦略兵法三十六計　混戦の計　第二十一計　金蝉脱殻
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

金蝉脱殻（きんせんだっこく）「金蝉、殻を脱す」

敵軍が太刀打ちできないほど強大で、抗するほど損害が拡大するような状態のため、一時撤退して体制を立て直したいとする。

この際、何の策もなく撤退すると敵軍の追撃を受ける危険性があるが、金蝉脱殻の計はこのような状態において安全に撤退するための策である。

すなわち、蝉が抜け殻を残して飛び去るように、あたかも現在地に留まっているように見せかけておいて主力を撤退させるのである。

撤退の場合だけでなく、戦略的な目的で主力を移動させたい場合にもそのまま使える手段である。

表に現れているものはそのまま残し、勢いをそのままにしていれば、友国は疑惑を持たず、敵国は手薄になったわが方に向かってこない。

これは表面を固くして内面を手薄にし、新たな遊軍を生み出す計略だ。

出典：フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』より

表向きは今までどうり変わらないように見せておき、裏側で作業を進める作戦です。

相手が気がついたときには、時すでに遅しということです。

カイゼンの世界で、コツコツと密かに研究を重ね改善を進めることをムーンシャイン（密造酒）と言います。

そして、新しいやり方でいけそうなメドが立ったら、生産工程へ反映していくことになります。

最初から、生産工程を弄繰り回すのは、影響が大きく、周りからも雑音が入ります。

このように仕組みを変えるときは、ある程度めどが立つまで、何も変わらないようにしておき、裏側で試行錯誤すると混乱が少ないかもしれませんね。

情報システムも変更するときは、ユーザインターフェースは大きく変えないで、裏側の仕組みを変えていくほうが、混乱が少なく、ユーザにも受け入れられやすいですね。

最初にシステムを構築する時に、このような作戦がとれるようにアーキテクチャを考えておくことがポイントです。

具体的には、ＭＶＣモデルとよばれる構成です。

Ｍは、モデル。Ｖはビュー。Ｃはコントローラ。

つまり、モデル（業務ロジック）と、ビュー（画面）とコントローラ（制御ロジック）を分離したものです。

この構成にしておくと、モデルの変更が、ビューに直接的な影響を及ぼすことなく変更できます。

かつて、ドイツ大手のＥＲＰパッケージは、データベースに項目を追加・変更すると、画面にも影響が直結したものでした。しかし、昨今のビジネス変化に対応するために、ＭＶＣモデルを採用したと聞きます。

もう一つ、この作戦を使う事例として、Ｗｅｂシステムの移行作業を紹介します。

あるシステムを再構築して本番移行する場合。既存システムを使うユーザがまったく気がつかないよう、新システムの切り替え作業を進めることができます。

既存のネットワークから切り離した新しい環境を用意して、そこに本番移行を実施します。
移行が完了した時点で、古いシステムをネットワークから切り離し、新しいシステムを接続します。

この時、ネットワークアドレスやＵＲＬを新旧で同じくしておけば、ユーザはまったく気がつきません。

もし、移行後に問題が発生し、古いシステムへ戻さなければならない時も、この逆の手順をとります。

この時、新旧でメニュー画面や基本画面構成なども共通化しておけば、大きな混乱なく、システムを切り替えることができます。

システムの構成要素を、できるだけ疎結合にしておき、仮想化しておくことで、裏側の物理的な変更をユーザが気がつかないように行うことができます。

これは、メインフレームでは古くから採用されている考え方です。

例えば、ＩＢＭ社のＩＭＳと呼ばれるＤＢＭＳでは、物理ＤＢ定義とアプリケーションは、ＰＳＢと呼ばれる中間的な仮想ＤＢ定義体を介してデータを操作します。

そのため、物理ＤＢに列の追加や変更があっても、PＳＢを変えなければ、アプリケーションには影響が及びません。

これを利用すれば、システム変更時の本番移行作業で、物理ＤＢ定義だけを先に裏で移行できるというしだいです。

つまり、移行作業の”外段取り化”が図れるため、システムを停止して行う”内段取り”時間を極限まで短縮でき、リスクヘッジできるのです。

こういった仮想化技術は、JavaのVM、JDBC、DataDataSourceなどに受け継がれています。

いざという時に本気で中核に手を入れ飛び込んで伴走してくれるコンサルタント

そんな心強い、頼りになるコンサルタントを探すサービスがあります。