システム導入の他社事例は背後の目的や戦略、プロセスまで把握して模擬すること

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●企業システム戦略　五輪書　水之巻　しつこうの身と云ふ事　
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「しつこうとは、漆膠（しっこう）のことである。

敵の身に我が身ををぴったり付けて離れないということ。

敵に身を寄せる時、頭も身も足も、強く付けるのである。

どんな人も、顔や足は早く入るけれど、身は引いてしまう。

敵の身に我が身を、十分に付け、少しも隙間のないようにする。」

相手に身をぴったりよせて付いていく戦法です。

例えば、競合他社の戦略と全く同じ戦略をとっていくとか、似たような製品をつぎつぎに、後追いで出していくとかです。

出店などで、大型店舗の直ぐ横に店を出すというやりかたを取っているところ、ありますよね。これは、コバンザメ戦略とも呼ばれているそうです。

しかし、ＩＴ導入などでは他社と同じようにＩＴを導入するだけで失敗しているケースもあります。

これは、表向きのＩＴだけを同じように導入しても、それを使う目的や戦略が無かったり、業務改革が進まなかったりした場合です。

他社事例は、とかく導入したＩＴだけがピックアップされて記事になったりするので、その背後にある苦労まで出てきません。

もし、他社と同じようにＩＴを導入するというならば、そういった見えない部分も含めて、全て模擬するようにしなければなりません。

そして、その後も他社の動向をウォッチして、ぴったりとついていくのは、かなり大変です。

ＩＴシステム以外にも、トヨタ生産方式などのシステムも同じことが言えます。「かんばん」や「あんどん」などの形だけを模擬しても、なかなかうまくいかないようです。

その背後にある思想や人材育成など、組織全体がドップリとついていかなければなりません。このようにトヨタ方式に完全についていける企業はなかなか、少ないようです。

武蔵が言うように「どんな人も、顔や足は早く入るけれど、身は引いてしまう。」

ＩＴシステムにしても、生産システムにしても、なかなか目に見えないところが多く、他社の成功事例を導入して、ぴったりとついていくのは大変なことです。

しかし、それができれば、いつか追越すことができるかもしれません。「守・破・離」の精神で。

一方、相手にぴったりとつけられた場合は、ついてこられないようにシステムを複雑化して、模擬できないようにすることです。

これが、バーニーの戦略論、リーソース・ベースド・ビューの中の企業が持続可能な優位性を持つための要因の一つである「模擬困難性」です。

模擬困難性には、さらに、以下の要素があります。
（１）独占性
（２）代替困難性
（３）パス依存性
（４）因果関係不明性
（５）社会的複雑性

こういった要素を持つ企業システムは、他社が完全に模擬することがむずかしく、ぴったりとついていけないので優位性が持続するのです。