変化に柔軟に適応するには、まっすぐでバランスの良い姿勢から

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　●企業システム戦略　　　　五輪書　水之巻　身なりの事 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「顔をうつむかず、あおむかず、かたむかず、ひずまず、目をみださず、

　額にしわをよせず、眉間にしわをよせ、目の玉を動かさぬようにして、

　まばたきをせぬような気持ちで、目を少し細めるようにして、

　おだやかに見える顔、鼻筋を真っ直ぐにして、少し頤を出すなり。

　くびの後ろのすじを真っ直ぐにし、うなじに力を入れて、肩から全身は

　同じような感覚で、両肩を下げ、背筋をまっすぐに尻を出さず、

　ひざより足先まで力を入れて、腰をかがめぬように腹をはる。

　常の身を戦いの身とし、戦いの身を常の身とすること肝要なり。」

　
　兵法における姿勢について具体的に書いています。

　おそらく、剣道などを経験したことのある人なら、ここに書かれていることは実感として分かるのではないでしょうか。

　そのような経験が無くても、ここに書かれているとおりに姿勢を正してみると、気持ちがシャッキとして、穏やかな気分になるのではないでしょうか。

　姿勢（身体）と平常心（精神）は、つながっているものです。

　さて、難しいのは、最後に書かれているところです。

　「常の身を戦いの身とし、戦いの身を常の身とする」

　このような平常時の姿勢（と心）を戦いに在っても崩さず、また、戦いの場での身のこなしを平常時のものとするのは、なかなか難しいものです。

　相手が切りかかってきたりすると、姿勢を崩して身体が傾いたりします。
　それは、同時に心の傾き（偏り）を意味します。

　「目の玉を動かさぬように」というのは、キョロキョロせず、また、切りかかってきた相手の太刀などに目を留めたりしないことです。

　しかしながら、一点を凝視するのでなく、広く観て、心を静かにゆるがせて、いろいろな点に気を配っておくのです。
　
　相手の太刀などの一点に目が留まると、そこに心が留まり、平常心では無くなります。

　ハッとして平常心ではなくなると、恐怖心が生まれるなどして身体が自由に動かなくなります。

　また、自分が切りかかるときも、妙に力んだりして姿勢（と心）が崩れます。

　そこに、身体にも心にも「隙」ができます。

　常の身を戦いの身とするには、戦いの場を想定して常日頃から姿勢を正して、平常心でいなければなりません。なので、戦いの身を常の身とすることが肝要なのです。

　企業システムにおいても、有事に望んで混乱しないためには、有事のことを想定して、平時の体制を整備しておく必要があります。

　例えば、高操業時を想定して、人員配置やシフトを考えておけば、実際に操業が高くなった時でも、残業などで乗り切ることができます。

　そのような体制をとって置かないと、混乱に慌てて、人を追加採用しなければなりません。そうなると、さらに混乱に拍車がかかるなど、とても平常心は保てない状況になります。

　そして、くずれた姿勢はバランスを失い、操業度が安定してくると、こんどは余剰人員が、固定費の足を引っ張ったりします。

　企業システムの人・物・金の姿勢（バランス）においても「常の身を戦いの身とし、戦いの身を常の身とし」外乱に対して、大きく崩れることなく対処できるように、リスクを想定して、ロバスト（頑健）に設計しておくことが肝要ですね。