企業システムの開発や運用にはトラブルがつきもの。もしも突然、重大トラブルなどが起きた時、落ち着いて対処できますか?慌てふためいてパニックを起こしたりすると二次災害を引き起こしかねません。そんな時の心構えを宮本武蔵は「五輪書 水之巻 心持の事」に記しています。
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五輪書 水之巻 心持の事
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「心の持ちようは、常とかわることなかれ。
常にも、兵法の時にも、少しもかわらずして、心を広く、真っ直ぐにして、きつくひっぱらず、少しもたるまず、心の偏らぬように、心を真ん中に置き、こころを静かにゆるがせて、そのゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬように、よくよく吟味すべし。
静かなる時も心は静かならず、何ともはやき時も少しもはやはらず、心は身体につれず、身体は心につれず、心に用心して、身体には用心をせず、心のたらぬ事なくして、心を少しもあまらせず、うへの心はよわくとも、そこの心をつよく、心を人にみわけられざるようにして。」
これは、心の持ちかたについて説明しているところです。
「平常心」とよく言われているところです。
万一の時や戦いの時にでも、いつもと変わらない精神状態で居ることは、なかなか難しいものです。
そこを、武蔵は、もう少し具体的に描いています。
「きつくひっぱらず、少しもたるまず」というのは、緊張しすぎず、弛緩しすぎずという意味です。そして「心の偏らぬように、心を真ん中に置き」「静かにゆるがせて、そのゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬように」
つまり、心を一ヶ所に止めずに、ユラユラと漂わせている感じです。
一つの何かに関心を寄せて、そこだけに集中しすぎていると不意をつかれたときに「ハッ!」として、一瞬、頭の中が真っ白になることがあります。
それが「隙をつかれた」という状態です。
企業システムの活動状態は、いろいろなところに現れます。
納期遅れや、コスト超過、品質問題、財務諸表や損益計算書、社員のモチベーションや組織風土、設備の故障などなど。
これらの一つ一つに心を留めることを、「偏る」と言って戒めます。
森羅万象、千変万化する、個々の事象に心を留めていると、留めたところで、隙をつかれます。
昨今、内部統制において経営陣の知らないところで現場が品質データを改ざんするなどの不祥事が突然発覚する事案が後を絶ちません。一因には納期やコストに偏ったことが考えられます。
内部統制で重大なリスクを見落としていませんか?社内の動きをしっかりと掌握できているという自信はありますか?内部統制は企業システムの根幹です。「千丈の堤も蟻の一穴より崩れる」の諺にあるように重大なリスクを見逃すと命取りになりかねません。
あるいは、システムが重大トラブルを発生した場合、障害回復することだけに心が囚われ偏ってしまうとセキュリティ面で甘くなって隙ができ、情報漏洩やサイバー攻撃を受けたりするかもしれません。また、エビデンスを残し忘れて、内部統制の監査で障害発生時のリスクコントロールに不備があると指摘をうけるかもしれません。
様々な視点で、企業システムの状態を捉えるための財務諸表や損益計算書は、平常心を持って、広く、真っ直ぐに観ましょう。
また、最近では、財務的視野のほかに、人材と学習、社内プロセス、顧客満足など多面的な視野で経営を俯瞰するバランス・カードや経営ダッシュボードという概念も出てきています。
いずれにしても、表面的な数値などに一喜一憂しないことです。
そして、心の動きを「人にみわけられざるように」することです。
他社に見抜かれれば、隙につけこまれますし、社内に見抜かれれば、社員にいらぬ動揺を与えたりします。企業システムの活動を阻害する外乱(ノイズ)は、外からも内からも発生する現代では、それらのノイズに一々反応していたら、安定したシステム運営は困難です。
特に、外乱(ノイズ)に対する心の持ち方や平常心での対応は重要です。
さらには、外乱(ノイズ)に対して、平常心を失わないように、「予め」外乱(ノイズ)を想定したシステム設計(ロバスト設計)をしておき、適切なバッファー制御(クッション)により、衝撃を吸収するような施策も重要です。
外からの刺激に対して、自分の心が留まっている、固執しているということを客観的に見られるように、もう一人の冷静な自分を持つように、よくよく訓練しましょう。
実際には、なかなか難しいのですが、
「自分が、今、目の前の物事に固執している」と気が付けば、心を偏りから開放して、静かにゆらいだ状態に戻すことができるようになります。
ちなみに、この訓練ができてくると、自動車の運転がスムーズになり、何かに気を取られたり、急な飛び出しなどにも「ドキッ」としてパニック状態(急ブレーキ、急ハンドル)になることが減ります。
企業システムの運営においても、急ブレーキ、急ハンドルは避けたいものですね。
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