組織を勢いつけるには、周到な準備の上に機を見て一気に発し、統制を乱さぬこと

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●企業システム戦略　孫子の兵法　兵勢篇　その７
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「激水の疾くして、石を漂わすに至るは、勢なり。
鷲鳥の撃ちて、毀折に至るは節なり。

この故に、善く戦う者は、その勢は険にして、その節は短なり。
勢は弩を張るが如く、節は機を発するが如し。

紛紛紜紜として闘い乱れて、乱すべからず。
渾渾沌沌として形円くして、敗るべからず。」

激しく水が流れ、石をも押し流してしまうのが、勢いである。
鳶が攻撃して、一撃で打ち砕いてしまうのが、節である。

このように、善く戦う者は、その勢いは険しく、節は短いのである。
勢いは弓を張るように、節は機を捉えて、その弓を発するように。

紛糾した乱戦状態になっても、統制を乱しては成らない。
混沌とした混戦状態になっても、円陣を組んで敗れてはならない。

これは、組織を勢いつけ発動するときの心構えです。

勢いをしっかり貯めて、一瞬の間に放つこと。
そして、混乱しても冷静を保つこと。

”仕事は、段取り７分”ということにも通じるところです。

五輪書にも、水之巻や火之巻に似たような教えがあります。

『水之巻石火のあたりといふ事』

『火之巻景気を知るという事』

いずれにしても、事前の準備をしっかりして、タイミングを見極め、一気に出ることが大事です。

システムの出力を分散させずに瞬間的に爆発させるには、ベクトルの向かう焦点が合っていること。

ベクトルの方向を合わせ一点に集中させるためには、システムの各構成要素や機能が、最終目的に対して、因果関係で連鎖している必要があります。

この因果関係を図式化したものが、バランス・スコアカードなら、戦略マップ、価値工学なら、機能系統図、トヨタのなぜなぜ分析や思考ツリーなどです。

システムが大規模になればなるほど、このような因果関係が希薄になり、ベクトル合わせが難しくなる傾向にあります。

特に大組織でセクショナリズムが横行し局所最適が進むと、俊敏なシステムから遠ざかってしまいます。

大規模なシステムも同じです。

数百画面もあるシステムでは、それぞれの画面機能がバラバラに作用して、システム全体としてのパフォーマンスが上がりません。

これは、システムを使う側の組織や人のベクトル合わせが、十分できていないからです。

そのため、大規模なＥＲＰやＳＣＭを導入したものの、投資ほどには効果が出ていないという事例は少なくありません。

一般には、小規模な、あるいは、シンプルなシステムの方がベクトルを合わせやすく、リーダーの決断が伝達しやすいものです。

大規模な、あるいは、複雑なシステムで同じように瞬発力を発揮しようとしたら、

よほど整備された統制、情報伝達網、強力なリーダーシップと組織への浸透が図られなければならないでしょう。

このような大規模な生産管理システムをコンピュータ主導で実現しようと考案されたのがＭＲＰ（現在のＥＲＰ）です。

そのＭＲＰに対し、シンプルに現場主導の生産管理システムを（生産計画は徹底的に平準化する大前提で）追求したのが、トヨタ生産方式です。

ＭＲＰの難しさは、まさに、変化の激しい複雑な状況下での、統制・情報伝達・トップダウンの難しさにあると思います。