◆システムを業務に組み込み、確実に使いこなすには?

企業システム戦略

◆業務への組込み、使ってこそナンボ
 大規模な投資をして、最新のITを導入したにもかかわらず、運用段階で十分に使いこなせず、当初の計画どうりの効果をあげられないケースがある。例えば、現場の帳票を電子化して、情報共有し、業務効率化を図ったのはいいが、ふたを開けてみると、現場は、あいかわわらず紙で情報交換していたりする。トップダウンで、号令をかけても一時は、システムの利用率が上がるが、すぐにもとの状況にもどってしまう。

 特に製造現場における、紙文化は歴史も長く、根強いものがある。スタッフやシステム部門の人間が考えてもいないような使われ方をしており、それが、実にうまいぐあいに機能していたりするのは、日本型インフォーマルシステムの妙である。

 しかし、会社として、全体最適を目的とし多額の投資をした以上、そうも言ってはおられない。現状は、限られた組織の中で上手く作用しているインフォーマルシステムも、会社全体からみれば、非効率であるし、まして、社外との連携強化が必要なこれからの時代に、そのようなインフォーマルシステムを放置しておくわけにはいかない。

 現場の実務者に、こういったことを根気良く説明して、納得してもらうのが最良であるかもしれないが、それでも「笛吹けど踊らず」ということがある。そのような場合は、システムを使うこと自体を日常業務に組み込んでしまうのが良い。具体的に、どうするかというと「ITの本質」で述べたように、情報処理は出力が要である。したがって、システムに情報を入力しなければ、次の作業に必要な情報が、一切出ないようにしてしまうのである。さらに、出力結果を入力に反映しなければならないようにする。いわゆるフィードバック制御型のシステムである。

 例えば、当日の作業進捗を入力しなければ、翌朝の作業指示書が、一切出力されないようにする。入力すれば、実績を反映した最適な作業指示が出力される。こうすれば、いやでも進捗を入力しなければならない。また、後で1週間分まとめて入力するということも許されないので、確実に毎日の作業進捗をシステムで把握することが可能となる。ただし、現場の圧力に負けて、進捗を入力しなくても、作業指示書が出るようにシステムを改修してしまっては、元も子もないが。

 このように、強制的に業務へシステムを組み込んでしまうと、最初は、めんどうだと思いながらも次第に慣れていくものである。これは、「型から入る」といって、日本の武道や茶道などで一般的に行われている修練の方法である。ところが、これには、まだ先がある。「守・破・離」といって、型にはまった修練が進むと、次第に工夫や改善が取り入れられ、初期の型が「破られる」、そして、さらに独自のアイデアを発想して「離れて」行く。

 つまりは、またしてもインフォーマルシステムの登場である。これは、日本人の良さでもあるので、決して悪いことばかりではない。もともと、業務システムというものは、「自動化の落とし穴」にも書いたように、ある時点での業務プロセスをマニュアル化・固定化したものであるので、それが、破られ、離れられるのは持って生まれた宿命である。

 特に、経営環境の変化が激しい時代に、現場がそれに合わせて、業務を変えていくのは当然である。従って、このインフォーマルシステムを放置しておくと、システムが陳腐化して使われなくなってしまう。そうならないように、常に変化を汲み取り、システムも自在に変化していく柔軟性を持たなければならない。そうでない、硬直したシステムを業務に組み込むのは、はなはだ危険であり、融通の利かない「やっかいもの」扱いされてしまうようになる。  

■目次:システム開発する前に知っておくべきこと83項目

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