◆複雑な要件を整理する時のポイントは?

企業システム戦略

◆シンプル・イズ・ザ・ベスト
 人間系機械系を合わせたシステムとしての全体系に対して、儲けるための「要件」を、じっくりと、知恵を絞って考えなければならないと述べたが、考えれば、考えるほど難しくなってくる。これは、人間系が本来もつ複雑さがあるからにほかならない。そのため、機械系だけを見て、要件を決めようとする傾向にある。特に、業者に要件定義を任せてしまったような場合は、コンピュータのハードウェア/ソフトウェア/ネットワークなどに対する要件が整然と定義されて、そこには人間系に対する要件は不在である。それは、部外者が最も避けて通りたがるところでもある。

 複雑な人間系に対する要件から逃げずに、しっかりと「儲ける」ための要件を考えるべきである。複雑な要件を整理するときには「シンプル・イズ・ザ・ベスト」の考え方で行うのが良い。複雑なものを、複雑に定義すると、さらに複雑になる傾向にある。そうではなく、複雑なものを、いかにシンプルに捕らえるかが重要である。目的達成に必要な要件は何か、真正面からシンプルに捕らえるべきである。シンプルなものは、結局、最高の結果をもたらし、最高のものは、シンプルである。また、シンプルなものは、美しくもある。美しいものも、また、最高である。要件定義書が、シンプルで、美しくまとまっていれば、それは、おそらく最高の要件定義になっているはずである。

 なんとなく、スッキリしない。美しくないと感じる場合は、やはり、どこかに矛盾や不整合が内在している。どうしても、シンプルにならないのであれば、そもそもの業務プロセス、あるいはビジョン、シナリオなど、最初の着想が複雑である可能性がある。まずは、ここをシンプル化することが必要である。複雑な業務プロセスのまま、システムの要件を複雑化するのは論外であるが、システムの要件だけに、シンプルを指向しても、またムリがある。要件定義が、シンプルで美しいシステムは、ソフトウェアも、シンプルで美しいものになることが多く、それは、コスト・期間を最小化し、最高の品質を生むことができる。

 情報処理、ソフトウェア開発において「シンプル・イズ・ザ・ベスト」は、あらゆる面でよい結果を生む。それは、人間の言語活動そのものであり、良いコミュニケーションや文章は、シンプルで美しいものである。シンプルで、美しいものは、柔らかくて強くもある。その逆に、複雑なものは硬直的であり、脆くもある。その意味では、最近のITは、複雑化しすぎていると思う。その為に、利用者が真にIT革新の恩得を受けられずにいる。  

■目次:システム開発する前に知っておくべきこと83項目

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