技術偏重はダメDXの元

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DXへの取り組みとしてどうしても技術から入ってしまうということはいたしかたない。

XD（トランフォーメーションByデジタル）ならよかったのかもしれない。言葉の持つ力というのは意外に大きい。

とはいえ、技術に偏った取り組みではDXの道のりは険しい。ノーコードツールやRPA、ワークフローといったデジタルツールを入れてはみたものの「変革」に至っていないケースは少なくないようだ。

そういったケースでは、教育の内容もツールの使い方など「技術」が中心となっているように見受けられる。

「技術（D)」に取り組みやすいのは、組織や人の問題を遠ざけていられるからではないだろうか。それは経営陣も経営陣以外も同じだ。

「変革（X)」への取り組みでは、組織や人の問題を避けて通ることはできない。そこには少なからず軋轢や摩擦がある。

経営陣にしても組織や人の問題を経営陣以外に丸投げするのは気が引けるだろうし、指示を受けた経営陣以外も頭の痛い問題だ。

品質を向上させるのは「技術」の問題。品質不正を防止するのは「組織や人」の問題というのと似ている。

前者は品質向上に向けて前向きな取り組みがされやすいが、後者の取り組みは難航するし、対策には時間がかかる。

技術者であってもなくても「技術」と向かい合うことはそれほど苦になることはないが、「組織や人」と向かい合うのが得意という人は希少だ。

例えば、Excelの関数を使いこなすのに学んだり工夫したりすることにそれほど抵抗感はない。しかし、Excelを使う業務プロセスを変更するのは抵抗感があったりする。

しかも、その業務プロセスの変更が自分だけではなく、他の部署や人を巻き込んで調整が必要となればハードルはさらに高くなる。

自他の心理的安全性が脅かされるリスクがあるからだ。

「変える」ことに対する心理的安全性が低い組織ほど、リスクは大きく、乗り越えるべきハードルは高くなるだろう。

利害関係者が相互に相手の懐に飛び込んで、「組織と人」にぶつかり合うのは相当に勇気が必要になることだろう。

そういった組織がDXに取り組もうとする場合、どうしても「技術」偏重になりやすい。

言い方は悪いが、「技術」に逃げ込めば、自他の心理的安全性が脅かされるリスクを気にする必要がなくなるからだろう。

しかし、「変革」を目指すのであれば「組織と人」は、避けては通れない道である。経営陣も経営陣以外も、どこかで体当たりしなければならない。

その時に大怪我にならないようにするには、ぶつかり方を練習しておくのがいい。

つまり、最初は小さな業務プロセスの変更から始めてみることだ。小さな業務プロセスの変更であれば、「組織と人」に関する衝突の痛みやケガも軽くて済む。

それで段々と成功体験を積めば、心理的安全性も高まってくる。心理的安全性が高まれば、変革に向けて組織と人に関して意見をぶつけやすくなるだろう。

また、ぶつかり合っても、ぶつかり方がうまくなってくれば、大怪我につながるリスクも小さくなるし、痛みやケガへの耐力も養われているので、簡単にあきらめないだろう。

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●企業システム戦略　五輪書　水之巻　身のあたりという事━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

身のあたりは、相手の間際に飛び込んで、体ごとぶつかるのだ。この体あたりは、やや顔をそむけ、左の肩を出して、相手の胸にぶつかるのである。