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企業システム戦略 孫子の兵法 九地篇 その7
凡そ客たるの道は、深ければ則ち専らに、浅ければ則ち散ず。国を去り境を越えて師ある者は絶地なり。
他国に進行する道は、深く入りこめば専念するが浅ければ散々たるものだ。
国を離れ国境を越えた所は絶地である。四方に通ずる中心地が衢地であり、深く侵入した所が重地である。少し入った所が軽地であり、背後が強固で前方が狭いのは囲地である。行き場のないのは死地である。
それ故、
散地では将に兵の志を一つにさせる。
軽地では将に兵を従属させる。
争地では将に後方部隊を急がせる。
交地では将に守りを厳重にさせる。
衢地では将に同盟を固めさせる。
重地では将に食糧を持続させる。
ヒ地では将に早く通り過ぎるようにする。
囲地では将にその逃げ道を塞がせる。
死地では将に活きられないことを示させる。
故に、兵の心情は、固くなれば防ぎ、やむを得なければ闘い、それが過ぎれば従う。
プロジェクトが迷走する理由は「状況認識の誤り」にある
製造業のDXやシステム導入プロジェクトがうまくいかない理由は、技術不足でもリソース不足でもありません。多くの場合、プロジェクトが置かれている状況を正しく認識できていないことが原因です。 古典の兵法では、戦場の地形を誤ると勝てないと言われますが、これは現代の企業システム戦略にもそのまま当てはまります。
プロジェクトには、深く入り込んで専念できる環境もあれば、浅く関わることで気が散る環境もあります。状況を誤認したまま進めれば、どれほど優れた手段を持っていても成果は出ません。 だからこそ、リーダーはまず 「今どこにいるのか」 を把握する必要があります。
プロジェクトの状況を見極めるための“9つの地形”
ここでは、プロジェクトが置かれる典型的な状況を9つに整理し、それぞれでリーダーが取るべき行動を示します。航空宇宙・産業機械の組立製造業におけるDX推進でも、極めて実務的に役立つ視点です。
①志が散りやすい状況では「志を一つにする」
立ち上げ期は、メンバーの志が散りやすいものです。 この段階で重要なのは 志を一つに固めること。
キックオフを必ず実施し、利害関係者の目的を統一しておけば、後の不測の事態でも利己的な動きが減り、チームの一体感が保たれます。 特にITプロジェクトは、志の希薄さが失敗の原因になることが多い領域です。
②プロジェクトの入り口では「統率を徹底する」
始まったばかりの段階で行動がバラバラだと、先が危ぶまれます。 志を固めたら、まずは 一丸となって動く仕組み を作りましょう。
検討会は全員参加を義務付けるなど、初期の統率が後の安定運営につながります。
③佳境に入ったら「後方部隊を急がせる」
プロジェクトが佳境に入ると、一体感を保つのが難しくなります。 特に後方部隊の遅れは致命的です。
先頭がどれだけ走っても、最後尾がゴールした時がチームのゴール。 後方の遅れを放置しないことが、プロジェクト成功の鍵になります。
④インターフェースでは「守りを厳重にする」
利害関係者、システム、データが交わる場所は、必ずリスクが潜みます。 交通事故が交差点で起きやすいのと同じです。
インターフェースは、最も慎重に扱うべき領域。 仕様の曖昧さや認識ズレを放置すると、後で大きな事故になります。
⑤利害関係者が集まる場では「同盟を固める」
利害関係者が集まる場は、協力体制を築く絶好の機会です。 根回しをして同盟を固めておけば、後の運営が驚くほどスムーズになります。
⑥重要ポイントでは「リソース枯渇を防ぐ」
作業ピークやカットオーバ直前は、リソース不足が命取りになります。 ガス欠では話になりません。
重要ポイントで必要なリソースを見積り、安全余裕を上乗せして確保しておきましょう。
⑦危険状況は「早く通り過ぎる」
危険な状況に長く留まると、ロクなことは起きません。 進退窮まる前に、速やかに通り過ぎることが重要です。
⑧ボトルネックでは「退路を断つ」
つぼにハマったような状況では、逃げ道を塞ぎ、真摯に取り組ませることが必要です。 逃げると必ず後でしっぺ返しがあります。
退路を断って挑戦させれば、窮地を脱した時に人が育ちます。
⑨デスマーチでは「正直に状況を伝える」
どうしようもないデスマーチになったら、隠さず利害関係者に伝えましょう。 リーダー一人がジタバタしても始まりません。
状況を正直に伝えれば、危機感が共有され、起死回生の知恵が出ることがあります。
状況が変われば心理も変わる。だからリーダーは“掌握”する
メンバーの心理は、環境や状況によって変化します。
- 固まれば防衛的になる
- やむを得ないと思えば立ち向かう
- 過度になれば成り行きに従う
組織を常に最高の状態に保つには、状況に応じた心理変化を掌握し、組織管理・コミュニケーション管理を行うことが不可欠です。
まとめ|状況認識こそ、製造DXの“見えない武器”
航空宇宙・産業機械の組立製造業では、複雑な利害関係、長い工程、重い責任が絡み合います。 その中でDXを成功させるには、技術よりもまず 状況認識の精度 が問われます。
状況を誤れば、どれほど優れた道具を持っていても使いこなせません。 状況を正しく捉えれば、道具は自然と活き始めます。
リーダーは、状況を読み、心理を掌握し、組織を導く。 それが、製造DXを成功させる“見えない武器”なのです。
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