多機能という不便:武蔵の兵法に学ぶ企業システム戦略

五輪書
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企業システム戦略 五輪書 風之巻 他流に太刀かず多き事

他流で、太刀の使い方を数多くして人に伝えているものがある、これは、兵法を売物に仕立て太刀数を多く知っているのだと、初心者を感心させようとしているのだろう。

これは、我が兵法では嫌う精神である。理由は、人を切る方法が多々あると思うこと自体、気の迷いだからだ。

世間一般で、人を切ることに変った方法などない。兵法を知る者も知らない者も、女子供でも、”打ち、叩き、切る”ということに、それほど多くの方法は無いのである。

しかし、場所や状況によって、上や脇などが窮屈であれば、太刀が支えないように持つ方法はある。

多機能という不便──武蔵の兵法が示す企業システム戦略の本質

製造業のDXが進むにつれ、現場には次々と新しいデジタルツールが導入されています。航空宇宙や産業機械の組立製造業では、品質・納期・コストの高度化に対応するため、システムの機能は年々増え続けています。しかし、現場から聞こえてくる声は意外にも「使いづらい」「複雑すぎる」「結局使われない」といったものです。

多機能であるほど便利になるはずなのに、実際には不便さが増していく──この矛盾はどこから生まれるのでしょうか。

その答えは、宮本武蔵の『五輪書・風之巻』に驚くほど鮮やかに示されています。武蔵は「技の多さ」を売り物にする兵法を強く戒め、本質から外れた技は勝ちにつながらないと断言しました。企業システム戦略においても、これはまさに核心を突く指摘です。

武蔵が嫌った「太刀かず多き事」──技の多さは本質ではない

武蔵は、他流派が太刀の使い方を数多く伝えることを批判します。それは兵法を商品化し、初心者を感心させるための見せかけにすぎず、実際には人を切る方法に多様なやり方など存在しない、と断言します。

打つ、叩く、切る──本質的な動作は極めて少ない。 変化があるとしても「突く」「薙ぐ」程度であり、構えも状況に応じた五つの型があるだけ。 それ以上の「ねじる」「ひねる」「飛ぶ」「開く」といった奇妙な動作は、むしろ勝ちを遠ざけると武蔵は説きます。

つまり、勝つために必要なのは「技の多さ」ではなく、 目的に対して合理的で、無理のない方法を選び抜くことなのです。

企業システムも同じ──多機能は価値ではなく“負債”になることがある

武蔵の言葉は、現代の企業システム戦略にもそのまま当てはまります。多くの企業が「豊富な機能を備えたデジタルツール」を導入しますが、実際に使われるのはその半分にも満たない言われています。今風に言えば、メタボリックなシステムです。

機能を増やすほど操作は複雑になり、現場は使いこなせず、改善効果は薄れます。武蔵が嫌った「技の多さ」が、現代では「機能の多さ」として姿を変えているのです。

ムリ・ムラ・ムダを生む“ねじり・ひねり・飛び・ひらき”

武蔵が否定した奇妙な動作は、製造現場で言えば「運搬のムダ」「動作のムダ」「加工のムダ」に相当します。情報システムにおいても、目的に対して不要な機能は、操作のムダ・データのムダ・管理のムダを生みます。

そして武蔵は言います。 「これまで役に立ったためしがない」 ──本質から外れた技は、結局成果につながらないのです。

本質に立ち返る──“使いこなし”こそ企業システム戦略の核心

武蔵は「身なりも心も真っ直ぐにして、敵をひずませ、ゆがませる」と説きます。これは、余計な技を増やすのではなく、基本を徹底し、相手の乱れを突くという合理的な戦い方です。

企業システムも同じで、本質的な業務プロセスをまっすぐに整え、必要最小限の機能を使いこなすことが成果を生みます。デジタルツールは「使いこなし」が伴って初めて価値を発揮します。

リーンなシステムこそ勝てるシステム

ムダのない状態を英語で「リーン(Lean)」と言います。欧米ではトヨタ生産方式を「リーン生産」と呼びますが、武蔵の兵法も当時としては極めてリーンでした。

企業システム戦略においても、 リーンな構造=ムダのない機能構成+使いこなしの徹底 が、最も強いシステムを生みます。

もし今、現場で「使いづらい」「複雑すぎる」「改善効果が出ない」と感じるなら、それは技(機能)を増やしすぎて、本質から離れているサインかもしれません。

武蔵の言葉に立ち返り、 身なりも心も真っ直ぐにして、ムダを削ぎ落とし、使いこなしを磨く。 その姿勢こそ、企業システム戦略の勝ち筋なのです。

◆要求機能が多過ぎる場合の対処方法は?
仕様書には、要件を満足すべくシステムに対する具体的な機能や性能を決定して、明文化していくのであるが、それは、全て真に必要、かつ十分なものか。この問いかけを忘れると際限なく仕様は膨張し続ける。その結果が、開発費用の肥大、開発期間の延長に繋がる。


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