企業システム戦略は“環境判断”で決まる|状況別に変えるプロジェクトの戦い方

孫子
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企業システムやDXプロジェクトが迷走する原因の多くは、「戦略が間違っていた」 のではなく、「環境判断を誤っていた」 ことにあります。
同じ手法でも、状況が違えば通用しない。逆に、状況さえ正しく読めれば最小の力で最大の成果を出すこともできる。本記事では、プロジェクトを取り巻く環境を6つのタイプに分類し、それぞれの状況で どのように戦い方を変えるべきか を整理します。

  • どんな環境では「攻めるべき」なのか
  • どんな状況では「退く」ことが最適なのか
  • どんな局面では「待つ」ことが勝ちにつながるのか

    企業システム戦略における“環境判断”の重要性を、現場と経営の両方を見てきた視点から解説していきます。

孫子の兵法「地形篇」を企業システム戦略として読み解く

企業システムやプロジェクトを進めていると、「同じやり方がまったく通用しない状況」に何度も出会います。
孫子の兵法地形篇」は、まさにその「状況の違いによる戦い方の変え方」を教えてくれます。

ここでは原文と現代語訳を押さえたうえで、企業システム戦略・プロジェクトマネジメントにどう応用できるかを考察していきます。


孫子「地形篇」原文と現代語訳

「孫子曰わく、地形には、通ずる者あり、挂ぐる者あり、
支るる者あり、隘き者あり、険なる者あり、遠き者あり。

我れ以て往くベく彼れ以て来たるべきは曰ち通ずるなり。

地形には、普通のもの、障害があるもの、分岐しているもの、
狭いもの、険しいもの、遠いものがある。
自分が往くことができ、敵が来ることができるのは、普通である。

孫子は、地形を次の6種類に分類します。

  • 普通の地形(通ずる地)
  • 障害がある地形(挂ぐる地)
  • 分岐している地形(支るる地)
  • 狭い地形(隘き地)
  • 険しい地形(険なる地)
  • 遠い地形(遠き地)

そして、それぞれの地形ごとに「取るべき戦い方」が違うことを説きます。


6つの地形の概要(現代語訳の要点)

1. 普通の地形
自軍も敵軍も自由に往来できる地形。
まず高所で日当たりの良い場所に陣を敷き、補給路を確保して戦えば有利になります。

2. 障害がある地形
進むのは容易だが、撤退が難しい地形。
敵に備えがなければ出ていって勝てるが、敵に備えがあれば勝てず、退くのも難しくなります。

3. 分岐している地形
自軍にとっても敵軍にとっても出撃が不利な地形。
敵がこちらに利を見せても安易に出撃せず、一度引いて様子を見て、敵軍が半分ほど出てきたところを攻撃するのが有利です。

4. 狭い地形
自軍が先にその場に陣取ったなら、防備を整えて敵を待つ。
敵が先に陣取り、防備が整っているなら無理に攻撃してはならない。備えが不十分なら攻撃すべきです。

5. 険しい地形
自軍が先に陣取るなら、高所で日当たりの良い場所を確保して敵を待つ。
敵が先に陣取っているなら、そこからは離れて従ってはならない(撤退すべき)と説きます。

6. 遠い地形
互いの距離が遠く、勢力が拮抗している場合は、戦いを仕掛けにくく、戦えば不利になりやすいとされます。

孫子はまとめとして、「この六つが地形に関する道であり、将として任ぜられた者は、必ず理解し、見抜かなければならない」と結びます。


地形を「経営環境」「市況」「問題領域」に読み替える

ここからが本題です。
この「地形」を、企業システムやプロジェクトにおける「環境や状況」と読み替えてみます。

  • 地形 = 経営環境・市況・問題領域・組織構造・利害関係の布置
  • 戦い方 = プロジェクト推進のしかた・システム戦略・打ち手の順番

リーダーたるもの、この「環境や状況に応じた戦い方」をよく考察しなければならない、というのが孫子のメッセージです。


6つの地形と企業システム戦略への応用

(1)普通の地形:標準的な環境でのプロジェクト

自分も相手も往来できる普通の地形では、状況がよく見え、明るい環境で、後方支援も充実している状態です。

  • 見える化がしやすい
  • モチベーションを維持しやすい
  • チームビルディングが機能しやすい

このような「特別な難所ではない」プロジェクトであれば、
見える化・モチベーション向上・チームビルディングをしっかりと行えば、プロジェクトは良い方向へ進みます。


(2)障害がある地形:原因不明の問題が潜む領域

往きやすく、退きにくい障害のある地形
これは、安易に踏み込みやすいが、抜け出しにくい問題領域に似ています。

  • 真因や構造的欠陥を特定できれば、一気に突破口になる
  • 真因が見えないまま闇雲に改善すると泥沼化する

対象ドメインに潜む真因や致命的欠陥を見抜き、そこに集中的に取り組めば、問題解決の突破口になります。しかし、それが見えていない状態で、施策だけを乱発すると、却って身動きが取れない「進退窮まる」状況になりがちです。


(3)分岐している地形:進んでも退いてもリスクが高い局面

自軍の出撃も不利、敵の出撃も不利。分岐している地形
これは、どちらに進んでも痛みを伴う意思決定の局面ととらえられます。

  • 相手が「おいしい話」を持ちかけてきても、すぐには乗らない
  • 一度撤退して様子を見て、相手が動いたタイミングを狙う

進退極まるような状況では、「お得そうな提案」ほど慎重に扱うべきです。
一旦撤退し、状況が少し動いたところを見計らって攻める方が、結果的にリスクを抑えられます。


(4)狭い地形:局所ドメインでの先手必勝

狭い地形では、先に陣取って待ち伏せるのが定石です。
もし後手に回ったら、相手の備えが整っている限り、無理に攻撃してはいけない。

  • 局所的・特定ドメインの問題は「先手必勝」
  • 出遅れた場合は、相手の隙を突くタイミングを待つ

ニッチな領域や限定的なシステム領域では、早く動き、先にポジションを取った方が圧倒的に有利です。もし出遅れたなら、正面からぶつからずに、隙や変更のタイミングを狙った方が、コストも少なく済みます。


(5)険しい地形:難所に挑むプロジェクト

険しい地形は、難度が高く、リスクも大きいプロジェクト領域です。

  • 先に高所・日当たり(情報優位・心理的優位)を取る
  • 見える化とモチベーションアップが生命線
  • それができないなら、無理に戦わず一時撤退も選択肢

難所でのプロジェクトは、メンバーの疲弊や摩擦も起こりやすく、情報が偏ると一気に崩壊します。見える化とモチベーションアップがうまく機能しない場合は、あえて「今は攻めない」「体制を立て直す」という判断も重要です。


(6)遠い地形:遠隔・多拠点・多利害関係者の問題

遠い地形は、物理的・心理的に距離がある関係者同士の問題に対応させることができます。

  • 勢力が拮抗していると、押し切ろうとするほどこじれる
  • ゴリ押しは、問題を深刻化させるだけになりがち

離れた場所や、利害関係者間の問題は、そもそも解決が難しいものです。
遠いまま大声で主張し合っても、問題は解決しません。コミュニケーションがねじれて、混乱を増幅するだけです。

このようなとき、リーダーはまず「距離感を縮めること」を優先すべきです。
物理的・時間的に困難であれば、TV会議・電話会議・オンライン会議などのICT(Information and Communication Technology)の活用が有効です。


リーダーが見落としがちな「地形」の影響

企業システムやプロジェクトを取り巻く環境・状況は多様です。
リーダーは、「今、自分たちはどの地形にいるのか?」を見極めたうえで、戦い方を選ばなければなりません。

  • 環境や状況の変化に鈍感なリーダー
  • どの地形でも同じ戦い方をしようとするリーダー

こうした組織は、なかなか成果が出ません。
特に、業務やシステムを設計・運営する場面では、その傾向が顕著で、リーダーの無知や鈍感さが、多くのムダや混乱を生んでいます。


まとめ:まず「地形」を見抜くことから始める

  • 同じやり方を、どの状況にも当てはめないこと
  • 今いる地形(環境・状況)を冷静に見極めること
  • 地形に応じて、攻める・守る・退く・待つを選び分けること

孫子の「地形篇」は、現代の企業システム戦略やプロジェクトマネジメントにも、そのまま通用する視点を与えてくれます。
次にプロジェクトを動かすとき、「これは6つの地形のどれに近いだろう?」と一度立ち止まって問い直してみてください。
そこから、これまでとは違う打ち手が見えてくるはずです。

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