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●企業システム戦略 五輪書 水之巻 無念無想の打ちという事
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「敵も打ち出そうとし、自分も打ち出そうとした時、身体も打つ身体、心も打つ心になって、
技が無意識に、空(くう)の状態から、敵より一瞬後に、敵より早く、強く打つこと。
これを無念無想といい、一番大事な打ちである。
この打ちは度々出会う打ちである。 十分に学び、鍛錬すべきである。」
これは、ボクシングでいうところのクロスカウンタです。「攻防一如」あるいは「ヒラメキ」とも言います。
また、時代劇などでおなじみの決闘シーンですね。二人の侍が同時に一瞬で切りあって後、一方がバッタリ倒れるやつ。
「技が無意識に、空(くう)の状態から、 敵より一瞬後に、敵より早く。。。」
このようなことは、なかなかできるものではありませんが、時として起こりうるのも事実です。
私自信、空手の試合などで、数度、このような技を決めたことがあります。
あるいはビジネスの世界で、市場の動きより一瞬後に、それより早く市場を制圧すると言うようなこともあるでしょう。
いずれにしても、この場合は、相手の動きを見てから防御して、その後に考えてから攻撃するのではなく、相手の動きと同時に一瞬のヒラメキで、防御しながら攻撃するのです。
相手の動きを予測しヤマを張っていた場合、ヤマが当たれば似た動きが出来ますが、ヤマが外れた場合、大きな痛手を被ります。
ヤマを張らずに、瞬間的に相手の動きに合わせて攻防一如で技を出すには、やはり無念無想でなければなりません。
無念無想といっても、禅僧のような「全くの無」ではありません。そこには、やはり「相手を斬る」という意志が存在します。(これを「空」と言い「無」とは、異なる状態です。)
その上で、どこから打ってくるか分からない、相手の動きを察知するためには、どこにも心を留めず、偏らず、空の状態にしておかなければなりません。
右の手で打ってくると思えば、右の手に気を取られ、左の手で打ってくると思えば、左の手に気を取られ、というのではダメなのです。
どちらの手にも心を留めず、しかし、相手が動いた瞬間に左右を見切りその一瞬後に、逆の攻撃を仕掛けるのです。
このようなことができるようになるには、日々の鍛錬の中で、右が来たら左、左が来たら右というように何百回、何千回と繰り返し、考えなくても、体が自然に反応するようになるまで練習を積むのです。
つまり、条件反射として脳と身体に染み込ませるのです。まるで、梅干を見たら、考えなくても唾液が出てくるように。
企業システムの場合も同じです。
あらゆる場面やケースを想定して、その対処方法を考え、繰り返し訓練しておくことで、いざと言う時に、無念無想の打ちができるのです。
「あらゆる場面やケースを想定」するということは、別の言い方をすれば、リスク・コントロールです。
様々なリスクを想定しておき、あらかじめ対処方法を決めておきしっかりと訓練をしておくのです。
ここでのキーは、やはり「人」です。
設備や情報システムは、基本的には最もリスクが少ない正常な状態を想定して設計されるべきであり、あらゆるリスクを想定して対処可能に設計したのでは、投資対効果が悪く、ムダが大きすぎます。
従って、設備や情報システムでは想定していない事態が発生した時のリスクを考え、対策を決めておき、いざと言う時に柔軟に対処できるのは、「人」でしかありません。
「人」の教育に手を抜き、全ての対処を機械設備や情報システムで自動処理しようとするような企業システムを設計するのは避けたいものですね。
トヨタでは、このような考え方を戒めるために「自働化」という言葉を使用しているのだと思います。
機械設備に、働=にんべん(人の知恵)をつけた自働化であり、異常があれば、即刻、停止して対策を取れるようすることです。
異常があれば機械設備が停止するので、人が常時ついて気を配る必要が無くなり、多台持ち・多工程持ちが可能となるのです。
そして、日々、改善を繰返すことで、ムダや異常が顕在化した時に即刻、対処や改善ができるようになり、ライン停止が短時間にできるのだと思います。
これこそが、無念無想の打ちです。
コンピュータはチェス名人や将棋名人にも勝てますが、ルールやデータが無い多様な状況を一瞬で判断し、最善の手を打つ「ヒラメキ」のようなことは、まだまだコンピュータにはできないのです。
人の脳(特に右脳)は、訓練によって無限の能力を発揮できる可能性があり、機械設備やコンピュータでの単なる自動化は、無念無想の打ちには、程遠いのです。
今後、数十年は、コンピュータ自らがヒラメクことも、改善を提案することも無いでしょう。
このことを、しっかりと頭に入れ、情報システムや設備を導入する時、少なくとも異常発生時に警告を発して停止するように設計し、警告を見た人が、どのような行動を起こすのか=人間系まで設計しておきましょう。
企業システム=人間系+機械系のフィードバック制御システム
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