個別受注生産の利益率向上は、できるだけ新図を起こさないこと

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顧客の要求に対して、いかに新図を起こさずに対応するか。

これは個別受注生産メーカにおける大きな課題の一つだ。

新図を起こせば、設計コストだけでなく、調達コストや生産準備、製造コスト、アフターサービスなど

製品のライフサイクル全体に渡ってコストに及ぼす影響は少なくない。

また、コストだけではなく、品質への影響もある。既存の部品を使用すれば、安定した品質で生産が可能となる。

しかし、新図を起こして新しい部品を作る場合は、初品検査が必要になるし、習熟曲線が示すように品質が安定するまでには不適合やクレームが発生しやすい。

そうなれば、それらに対応するための手戻りコストや手戻り時間が必要となり、納期も圧迫することになる。

個別受注生産では多くの場合、既存図面の流用率は30%を切っているので利益率の向上が難しいのは、こういった事情によるものではないだろうか。

これらのデメリットを考えれば、できるだけ既存の部品（図面）を使用して、顧客の要求を満足するよう仕様の調整を行うのが得策だ。

全社方針として既存図面の流用率を60%以上にして、高い利益率を叩き出している海外のトラックメーカーもある。

そのためには仕様調整の主導権を握ることが重要になる。

顧客の要求を一方的に受けるだけで、そのまま設計につなげてしまうと主導権を握るのは難しくなり、
どうしても新図を起こす流れになってしまう。

既存部品（図面）を使用して要求事項を満足するために先手を打って逆に提案していく必要がある。

そのためには単に既存図面が容易に検索できれば良いという話ではなく、営業と設計や製造、調達、アフターサービスといった各部門との連携が必要だ。

もちろん、DXによって様々な切り口から既存図面や製造・調達コストなど、その関連情報を容易に探し出せるツールや環境の整備は基盤として必要である。

例えば、無理に既存部品を流用して設計・製造コストを下げたとしても、メンテナンス性が悪化してサービスコストが増えてしまうようでは、本末転倒になる。

仕様調整はこちらの提案を顧客が納得して受け入れてくれるのがベストであるが、場合によっては引き換えにメンテナンスサービスを格安で行うなどの交渉が必要かもしれない。

どうしても既存部品の使用による提案を受け入れてもらえなければ、いよいよ新図を起こすことになるが、その場合は設計や製造、調達、アフターサービスの総動員で対応することになる。

最もやってはいけないのは、なんの提案もなく要求仕様のとおりに全て新図を起こそうとすることである。

とりあえず受注さえ取れれば、あとは設計や製造、調達、アフターサービスでなんとかするだろうという思考停止状態が一番怖い。それでは赤字受注となっていることさえ気が付かない恐れがある。

そのような戦法は「已むを得ざるためである。」と孫子は言う。

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　●企業システム戦略孫子の兵法　謀攻篇　その３
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「上兵は謀を伐ち、其の次は交わりを伐ち、
　其の次は兵を伐ち、其の下は城を攻むるなり、
　城を攻める法は、已むを得ざるがためなり」

　最上の戦略家は、謀略を図る、
　その次は、交渉をする、
　その次は、軍隊で攻め、
　その下は、城を攻める。
　城を攻める戦法は、已むを得ざるためである。