窮地に立たされた時、あえて無防備を装って相手の困惑を誘って打開する

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●企業システム戦略　兵法三十六計　敗戦の計　第三十二計　空城計
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空城計（くうじょうけい）

わざと無防備を装う事（｢空城｣）により、敵の判断を惑わす作戦。

例えば敵軍に攻め寄せられた際に城門を開け放ち、自ら敵を引き入れようとすれば、優秀で用心深い指揮官ほど逆に警戒するものである。

手薄なときはこれをさらに手薄にすると、相手は疑いがとめどなく湧いてくる。

出典：フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』より

どうしようもなく劣勢になった時は、わざと無防備を装い、困惑をさそうという作戦。

しかし、これは相手が警戒心の強い智将であればこそ。

そして、自らは日ごろ慎重で思慮深い行動を心がけていること。

そうでなければ、何の疑いも持たずに攻め込まれて、一巻の終わりです。

相手と自分を良く知った上での作戦です。

すなわち、孫子で言うところの ”彼れを知りて己を知れば、百戦して殆うからず。”

私の体験談で恐縮ですが。

空手道の組み手試合でのことです。

相手はかなりの上級者でした。

中盤までは、なんとか互角に攻めあっていたのですが、とうとう、１本先手を取られてしまいました。

しかも、残り３０秒のところでした。

私は、最後の一発に賭けることにしました。その瞬間を狙うために講じたのが「空城計」です。

もちろん、その当時、「空城計」は知りませんでしたが。

定位置に戻って再開の合図があったところで、あきらめの雰囲気で、少し遠めに間合いを取り、無防備で、全く戦意喪失であるようにしました。

相手もそれまでの攻防で、こちらもそれなりの力があると見ていたのでしょう。それが、全く無防備な姿勢を見せたので、一瞬、攻撃の気に迷いが生じたようです。

その心の動揺をついて、思い切り遠間から飛び込み、上段突きを繰り出しました。

”一本！”と同時に、制限時間いっぱいでした。

それで何とか引き分けに持ち込むことができたのです。

このように、喧々諤々、攻防戦を繰り広げている時、劣勢の瞬間、さらに無防備を見せると、一瞬、攻撃の気に迷いが生じるのが人情のようです。

議論の場でも、そのようなことはあります。

議論を戦わせている時に、 ”それについては、良く分からないので教えてください。” と無防備な姿勢を見せると、そのとたんに、 ”いや、実は、私も良く分かりません。”などと相手も困惑の表情を見せるということがあります。

情報システムの要件定義や業務改善などでは、多くの利害関係者が存在します。

当然、さまざま異論が出てくるものです。

あまりに議論が白熱しすぎて、どうしようもないなと思う時には、このように「空城計」をうまく使えば、相手の気を削ぎ、時間を稼ぐと共に、互いにクールダウンさせることができます。

それから、仕切り直しをすれば、よりよい合意点が見つかるかもしれません。

最初から最後まで、理論武装で固めて、どちらかが完膚なきまでに負かされるより、将来に禍根を残さなくてよいでしょう。

論破して負かせば、必ず相手は根に持ちますし、勝ったほうも、後味が悪いものです。

昨今は、ＩＴ関連の争議も増えているようです。

どうにも煮詰まってしまった時には、「空城計」を考えて見ましょう。

なにか、打開策が見つかるかもしれません。

それから、情報システムのユーザ認証に関する事例で、次のような寓話を聞いたことがあります。

ほんとかどうか定かではありませんがある日、銀行ＡＴＭでユーザ認証用のデータベースに障害が発生したときのことです。

障害回復には１時間ほどかかる見通しだったそうな。

ウィークディの月末、1時間でもＡＴＭは止めたくない。さて、どうするか。

いろいろ考えた挙句、ユーザ認証は何も行わず（無防備で）単に、”そのＩＤでよろしいですか？”
”間違えた場合は、係員がお伺いします。”

”よろしければ、ＯＫを押してください。” ”取引を中止する場合は、キャンセルを押して下さい。”

というメッセージを出すだけにしたそうです。

これで、善意の大多数は、ＯＫを押して問題なくＡＴＭを使用でき、悪意のある者は躊躇して、キャンセルするであろうと。

もちろん、それでも”ＯＫ”を押せば、偽のＩＤでもパスしてしまうわけですが。

犯罪者の心理を逆手に取った、いちかばちか危急の策（「空城計」）と言えましょう。