業務パッケージ導入のコンコルド効果

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2025年の崖に向けて基幹システム再構築などの動きが活性化しそうだ。多くのケースではスクラッチ開発ではなく、統合業務パッケージなどを導入する方向で進むだろう。

この場合、「業務パッケージ導入のコンコルド効果」について考えてみたい。

コンコルド効果とは超音速旅客機のコンコルド開発における失敗に由来する心理的効果のことだ。

コンコルドは大きな期待をかけて多額の開発資金を投資したが、途中で採算が合わないことが発覚した。しかし、関係者はそれまでの投資を無駄にしたくないために開発を完工しコンコルドの運用を開始した。

ところがやはり、飛ばせば飛ばすほど赤字が膨らみ投資回収のめどが一向に立たなくなり、巨額の赤字を出して終焉となった。

これと似たようなことが業務パッケージの導入ではも起こりえる。

通常、業務パッケージを導入する場合にはRFPを提示してベンダ数社から提案を受け、比較選定する。その後、提案したベンダによるFit&Gap、要件定義といった流れで導入が進む。

当然、Fit&Gapの段階から業務パッケージを熟知したベンダの支援が必要になるため準委任契約などにより発注することになる。

場合にっては、業務パッケージ選定の段階からコンサルティング会社にお金を払って支援を頼んでいるかもしれない。

おそらくこの時点でもかなりの金額を投資することになるだろう。

Fit&Gap、要件定義と作業が進むにつれて「もしかして選定を誤った？」と頭の隅をよぎっても、すでに多額の投資をしているのでいまさら「選定をやりなおす」などということは考えられない。

そのため一抹の不安を進めながら作業を進めることになる。そして、要件定義が終わるころにはGapがはっきりとする、その代償が膨大なカスタマイズ規模とその見積だ。

もうここまできたら「選定をやりなおす」という選択肢はほぼなくなる。おそらくプロジェクトは多額のカスタマイズ費用を支払って開発へと進むだろう。

例え、運用を開始しても膨れ上がったカスマイズ費用の投資回収は困難だとわかったとしても、導入を中止することはできない。すでに多額の投資をしているのだから。しかも、2025年の崖はすぐそこまで来ている。

これが「業務パッケージ導入のコンコルド効果」だ！

結局、せめてもの抵抗でカスタマイズ費用を抑えるために、いくつかの要望を却下したり先送りしたりすることになる。

このような状況なので利用部門は不満をかかえたまま、運用を開始することになる。また、経営層にしても多額の導入費用がいつまでたっても回収できないという不満が残る。それらの不満は情シスに向けられることになる。

情シスは厳しいプロジェクトをなんとか完工したにもかかわらず、評価されるどころか経営層や利用部門からの不満をぶつけられる。まさに、三竦み状態だ。

運用開始前に投資分を特別損失に計上して全てチャラにするという荒業もあるが、その場合、今回は「2025年の崖」から転落、ひいては会社が墜落するという大きなリスクが待っている。

パッケージ選定をやりなおすか突き進むかの大きな経営判断をどのタイミングで行うか、万一、やりなおす場合の既投資額やFit&Gap率などの判断基準を持ちながらプロジェクトをドライブしていく必要がある。

気が付かないうちに「梯子」が外されてしまい、コンコルド効果により最悪の結末を迎えないように。

最もリスクの低いやり方は、クラウドベースの業務パッケージを選定し、必要最低限のライセンスを購入してノンカスタマイズで試用してみることだ。「無料のお試し」サービスがあれば、積極的にこれを使うべきである。

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●企業システム戦略兵法三十六計　併戦の計　第二十八計　上屋抽梯
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上屋抽梯（じょうおくちゅうてい）

「屋（おく）に上げて梯（はしご）を抽（はず）す。」

屋根に上らせてから梯子を外せば敵は下りたくとも下りられない。飛び降りれば怪我をする。すなわち敵の自縄自縛を促しそれに乗じる計略。