小手先のデジタル活用を積上げても、変革「DX」には至らない

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●企業システム戦略　五輪書　水之巻　しうこうの身と云ふ事
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「秋猴（しゅうこう）の身とは、手を出さぬという気持ち。敵へ身を寄せていく時、少しも手を出す心無く、敵が打つ前に、身体を早く入れてしまうことである。

手を出そうと思うと、必ず身は遠のくものなので、全身で、すばやく移り入る心である。手で受け合いするほどの間では、身も入りやすい。」

これは、何事においても、小手先ではだめだということを言っています。気が焦ってしまい、手だけが先に出てしまうことは良くあります。

野球のバッティングなどでも、「手打ち」という言葉があります。脇をしめて、しっかり腰を入れて、お尻をボールにぶつけるつもりでバットを振るのが良いと言われていますね。

つまり、腰が引けないようにすることです。

野球は、斬り合ではありませんが、プロのボールが身体に当たれば、大怪我をしますから、それで気が引けると腰が引けて、手打ちになってしましますね。

まして、真剣での斬り合いであれば、なおさらです。

それでも、思い切って一気に身体を相手に寄せていかなければ、有効な打撃を与えることはできません。

武道の世界では、同じような言葉がいくつかあります。

「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあり」とか、「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、たんだ踏み込め、そこは極楽」とか。

企業のシステム導入などでも同じことが言えると思います。

本来は、業務プロセス改革も行った上で、システムを導入すべきところ、システムの導入という手段だけが目的化され、本来の業務改革などは、逃げ腰になって後回しや手付かずのままになっていることが、少なくないようです。

確かに業務を変えるのは大変ですが、真の問題がここにある以上、しっかりと身を寄せて、全身でぶちあたっていく気持ちが無ければ、思ったほどの効果は得られないように思います。

また、導入後においても、画面のレイアウトや帳票の並び順、細かい条件設定などを、コンピュータ上のプログラムだけを、いじくりまわしたところで、本質的な業務プロセスを変えない限り、問題は何も解決しないものです。

企業システムの最重要構成要素が「人」である限り、真に企業システムが変革する時は、人事制度の抜本的な見直しや役員の大幅な入れ替えなどが起こるはずで、それが起きない限り、しょせん小手先の変革でしかないと思います。

社長・役員の交代や人事制度の変更は、それまでの企業システムの根幹を自己否定することであり、まさに、「身を捨てる」に値することです。

当然、それまでの既得権者から大反発もあるでしょう。

しかし、経営者が自己否定し、身を捨てて業務改革や組織風土改革などに本腰を入れず、小手先の改善だけで一喜一憂しているのは、へっぴり腰で、刀を振り回している姿に似ていませんか？