レガシ刷新でガバナンスが後退する恐れ

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レガシシステムを刷新して新しいシステムに移行する時に注意しなければならないのは、これまでに蓄積されてきた失敗から学んだ業務ノウハウだ。

どうしてもレガシシステムの悪い面ばかりが目に付いて、新しいシステムに移行すればそれらの点が改善されるから現状よりも良くなるはずだという思いがある。

しかし、レガシシステムにはこれまでの長い経験で失敗から学んだ業務ノウハウが沢山ある。それらは様々なチェックロジックとしてアプリケーションに埋め込まれている。

新しいシステム、特に市販パッケージにはそういったチェックロジックが無いことが多い。なぜなら、チェック内容は組織毎に失敗経験から生まれるものなので、予め標準化することが難しいからだ。

特に組織ごとに設けられたコード体系と入力内容を照合するようなチェックでは、そのコード体系がマスタとしてレガシシステムに存在することが多い。

例えば、コード体系によって内作品か購入品かを識別し、それによって手配や製造、品質管理などのプロセスを制御しているようなケース。

そのため、レガシシステムではチェックされていたことが、チェックされなくなってしまい過去と同じ失敗を再発する恐れがある。

せっかく新しいシステムの新しい機能でデジタル化が推進できると思っているところを、足元を掬われかねない。守りが手薄くなり、組織の弱体化や後退につながってしまう。そうなっては、攻めに転じるどころではなくなる。

もちろん、レガシシステムのチェックロジックを全て調べて機械的に新システムに反映するようなことは無駄が多い。新システムに無い、チェック用のマスタなども大量に追加するのも無駄になる。

ガバナンスを維持するために、どのようなチェックが重要か否かを精査する必要がある。その時に、よりどころとなるのは、業務標準や過去の失敗事例、戦訓集などである。

経営的に大きな損失を発生させた失敗は、業務標準などに反映されていることが多い。損失が大きくなればなるほど、全社標準などに格上げされているだろう。ISOなどに取り組んでいる場合は、ISO関連の文書にも反映されているはずだ。

そういった文書に無く、アプリケーションの中にだけ埋め込まれているようなチェックは軽微な場合が多いので省略することができる可能性が高い。

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　●企業システム戦略孫子の兵法　軍形篇　その１
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昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるをなして、以って敵の勝つべきを待つ。