変革するために最初は逃げ道も必要、半強制の全員参加はハイリスク

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DXによる変革では一部のデジタル人材だけでなく、あらゆる業務部門の担当者全員が取り組むことを要求される全社的な活動として進められることが少なくない。

まるでDXに取り組まないのは反動分子であるかのようだ。

しかし、半ば強制的に変革を進めようとしても逆効果になるということが多くの研究で明らかになっている。最初から全方位で変革から逃げられないような状況に追い込むのは、返って強い抵抗を生むことになる。

あるいは、あからさまに抵抗はしないとしても遠巻きにして冷ややかな態度や視線で変化を拒むという静かな抵抗に遭うこともあるだろう。

それよりは変革に前向きな少数派の人たちと行動を起こして、あまり前向きではない人たちに対しては変革からの逃げ道を用意してあげたほうがよい。

この変革は一部の人たちで試行をはじめるけど、無理に変革しようとしなくてもいいのだというメッセージを発信することで、変革に対してあまり前向きではない大多数の人たちにとって、強制的に変革を促されるという緊張が緩和される。

そうした心の余裕があれば、一部の人たちが始めた変革の成り行きを冷静に見守ることもできるだろう。

ただし、何が起きているかに対して無関心にならないように情報発信・状況共有はしっかり行っていく必要がある。それは、変革に対して今後一切関わらなくてよいということではないというメッセージになる。

多くの統計からパレートの法則では、システムの２０％が全体の動きに大きな影響を与えることが分かっているので、こうして変革に関して共有を続けることで賛同者が２０％に達するころには全社的な変革へと加速するだろう。

自分には変革は関係ないと気が緩んでいた人たちが、一部の少数派の成功を目の当たりにして、そして小さな成功をいくつも目にすることで、「おお、がんばってるな。へぇー。えっ？えっ？ええーっ？！」となって、気が付いたら自分も変革に巻き込まれていくのだ。


システム全体を変えるために、一気に全てを変えたいという衝動にかられ、多額の予算、大規模な体制、大規模なイベントや全社的活動計画などを考えがちだが、これはハイリスク・ハイリターンなやり方だ。

そして、ハイリターンを得る確率は低く、成功事例もほとんど聞かない。しかも、失敗した時の損失は計り知れないくらい大きくなってしまう。このような大きな失敗は多くのステークホルダの知るところとなり、次の挑戦の機会やモチベーションの妨げにもなってしまう。


それよりは、変革に前向きな人たちと小さく行動を起こした方が成功の確率が高く、例え失敗しても目立たないのでネガティブな情報が内外に拡散され、挑戦の足を引っ張られずにすむ。

変革にあまり前向きでない人たちを最初から半強制的に巻き込むより、まずは変革からの逃げ道を用意してあげよう。


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　欲擒姑縦（よくきんこしょう）

　「擒（とら）える事を欲するならまず逃がせ」

　敵をわざと逃がして気が弛んだところを捕えるのが良い。

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