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― なぜ運用は一年後に崩れるのか。現場が自走するまで伴走し切る“底抜け”の戦略 ―
DXや業務改革のプロジェクトは、導入までは順調でも、運用フェーズで崩れるケースが後を絶たない。
システムは動いているのに、現場が使わない(いつのまにか使わなくなった)。
最初は成果が出たのに、気づけば元のやり方に戻っている。
担当者が異動した瞬間に、運用が止まる。
これは単なる“現場の怠慢”ではない。
運用が定着する前に、底が抜けていなかったのだ。
この「底をぬく」という概念を、宮本武蔵の『五輪書・火之巻』は次のように説いている。
底をぬくというのは、心底から負けたという気にさせるまで見極めること。
この底を抜くのは、太刀でもぬき、身でもぬき、心でもぬくのであり、一つの道しかないのではない。
武蔵は“相手を圧倒する”という表面的な意味ではなく、
状況を揺り戻しが起きないところまで見極めるという深い戦略を語っている。
DXの運用定着も、まさに同じだ。
運用が崩れる理由は「底が抜けていない」から
私は過去、航空宇宙メーカーで生産スケジューラを導入し、現場と共に運用まで漕ぎつけ、大きな成果を出した経験がある。
しかし一年後、そのシステムは放置された。
原因は、作業長の異動による引継ぎ不足。
つまり、運用が“人に紐づいたまま”で、組織の仕組みとして底が抜けていなかったのだ。
これは多くの企業で起きている典型的な失敗パターンといえるだろう。
- キーパーソン依存
- 標準化が不十分
- 習慣化が浅い
- 文化として根付いていない
- 「なぜやるのか」が腹落ちしていない
導入直後はうまくいっても、
繁忙期・トラブル・異動・新人配属などの揺り戻しで簡単に崩れてしまう。
五輪書「底をぬく」が示す運用定着の条件
五輪書の一節は、運用定着に必要な“多層の見極め”を示している。
- 太刀でもぬく(技術)
手順・システム・標準化が揺るがないレベルまで基礎を固める。 - 身でもぬく(行動)
現場が無意識に正しい動きをできるレベルまで習慣化する。 - 心でもぬく(納得)
「なぜこの運用が必要なのか」が腹落ちし、主体的に守る状態になる。
この三つが揃って初めて、
揺り戻しが起きない“底が抜けた運用”の状態といえる。つまり、これが守破離の守だ!
守破離の「守」は運用定着の核心
武道の世界では、守破離の“守”が徹底される。
基本動作が無意識にでき、身体が勝手に動くようになるまで、徹底的に型を叩き込む。
この段階を経ずに勝手な工夫(基本を破る)を始めると、生兵法は大怪我のもとになる。
DX運用でも同じ
- 手順が身体化していないのに「現場流」に変える
- システム理解が浅いのにショートカットを作る
- 標準化が固まる前に“俺流のやり方”が始まる
これらはすべて、運用崩壊の種。
守ができていないのに破へ進むと、必ず揺り戻しが起きる。
運用定着のための「底をぬく」5つの実践軸
経営者・DX推進者が押さえるべきポイントは次の5つ
1. 技術の底をぬく(仕組みの自立性)
- 手順書・FAQ・動画マニュアル
- システム側のガードレール(エラー防止・自動化)
- 異動者でも回せる標準化・仕組み化
2. 組織の底をぬく(役割の二重化)
- キーパーソン依存の排除
- 交代要員の育成システム
- 引継ぎプロセスの標準化
3. 人の底をぬく(習慣化)
- 現場が“自分たちの道具”と感じるまで伴走
- 小さな成功体験の積み上げ
- 現場の声を反映する改善サイクル
4. 文化の底をぬく(運用を守る空気)
- 「元に戻さない」文化
- 運用逸脱を許さない仕組み
- 定着を評価する制度
5. 心の底をぬく(納得と腹落ち)
- なぜこの運用が必要なのか
- 何が良くなるのか
- 自分たちの仕事にどう貢献するのか
この五つが揃って初めて、現場が自走する運用が生まれる。
DXは「導入の終わり」ではなく「定着の始まり」
多くの企業が誤解しているのは、導入=ゴールという考え方。
本当は逆で、
導入=スタートラインです。
運用が定着し、
現場が自走し、
文化として根付くまで伴走し切ること。
これこそが、
DXを成功させる経営者・推進者の重要な役割になる。
五輪書の「底をぬく」は、
運用定着の本質を見事に言い当てている。
技術・行動・心の三位一体で、揺り戻しが起きない状態まで見極める。
それができて初めて、運用は“底が抜けた”と言える。
まとめ:現場が自走するまで伴走する
運用定着とは、
守破離の“守”を徹底し、
五輪書の「底をぬく」を実践すること。
- 技術
- 組織
- 人
- 文化
- 心
この五つの層で底を抜くまで伴走する。
それができたとき、DXは初めて“成果が続く仕組み”になる。
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●企業システム戦略 五輪書 火之巻 底をぬくという事
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底をぬくというのは、心底から負けたという気にさせるまで見極めること。
この底を抜くのは、太刀でもぬき、身でもぬき、心でもぬくのであり、一つの道しかないのではない。
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