システムや組織の乱れは統治から生じ、怯えは勇気から生じ、弱さは強さから生じる

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●企業システム戦略　孫子の兵法　兵勢篇　その８
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「乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。」

乱れは統治から生じ、怯えは勇気から生じ、弱さは強さから生じる。

組織の勢い（情勢）というものについて３つ例示しています。

勝つためには、このような組織情勢が変化するメカニズムを知り、予め危険を予知して、早めに対処する必要があります。

一つ、「乱れ」というのは、治まっている状況のなかから生じる。

「乱れ」というのは、治まっているからこそ生じるものであり、未来永劫に治まったままの状況などないと認識しておくべきということだと思います。

したがって、治まっていることに安住するのではなく、早め早めに、「乱れ」の予兆を感知し、火種をつぶすことが重要です。

システムというものも、不安定な状態と安定な状態を揺れ動いているものです。

不安定な状態になってしまう前に、「乱れ」を感知し、安定化させるようフィードバック制御をかけられるように設計しておくのがよいでしょう。

例えば、組織運営で構成員の健康状態や精神状態をモニタリングし、異常な兆候があれば早めの適切な処置をする仕組み。

情報システムにおいても、ネットワークやＣＰＵ使用率、ＤＩＳＫ容量の増加傾向などをモニタリングする必要があります。

そして、異常な変化や増加があれば、早めに処置をする仕組み。ＪＳＯＸの内部統制でも、さまざまなログをモニタリングすることが求められています。

一つ、「怯え」というのは、勇気に満ちた状況のなかから生じる。

「怯え」の心というのは、突然に襲ってきたりします。勇気に満ちて怖いものが何もないという状態が、一番危険です。

そのようなときは、リスクに対しても気が大きくなりがちです。そのような心のスキに「怯え」は、突然、入り込んできます。

五輪書などの兵法指南書では、「平常心」を説いています。勇猛でもなく、怯えるでもなく、常に平静を保つ心の状態。

ニュートラル。

システムにもニュートラルな状態があります。このニュートラルな状態を明確に定義しておくことで、異常な状態を知ることができます。

別な言い方をすれば、ニュートラルとは、標準です。

トヨタ生産方式で、標準を重視する一つの理由が、この異常を的確に認識するためです。”標準と違う状態が異常である”という考え方です。

一つ、「弱さ」というのは、「強さ」の中から生じる。

強くて頑丈なものほど、弱さや脆さを内在していることがあります。頑健な心身の持ち主にも、弱点はあります。

組織やシステムもそうです。頑丈な組織やシステムほど、弱くてもろいものです。本当に強いものは、内に潜む「弱さ」を知っています。格闘技でもチャンピオンほど、弱さを知っているものです。

だから、常に「弱さ」を克服するために精進を怠りません。

サプライチェーンマネジメントの世界で有名な小説「ザ・ゴール」のＴＯＣは、この強さの中の弱さ（ボトルネック）に焦点をあてた改善手法です。

クリティカル・パスやクリティカル・チェーンも、弱さに焦点をあてたスケジュール管理手法です

こうしてみると、管理手法は、弱さに焦点をあてて、そこを管理するというものが多いようですね。なぜなら、”システムのアウトプットはボトルネックに制約される”というＴＯＣの主張が正しいからでしょう。

そのため、アウトプット（価値）を最大化するには、ボトルネックをマネジメントする必要があるからです。